【書評】貝塚茂樹『世界の歴史 1 ─ 古代文明の発見』(中公・旧版)感想&レビューです。

どうも、りきぞう(@rikizoamaya)です。

大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。

社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。

働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。

働くなかで思うのは、自分の市場価値をアップするには「教養」が大切だということ。

「できるなぁ」
「発想がすごいなぁ」

と、思う人は、キホン、教養を身につけています。

なかでも、重要なのは「世界史」です。

ここ数年、ビジネスマンの基礎知識として「世界史」が注目をあつめています。

ネット時代をむかえ、グローバル化が加速しているからです。

外国との交流が増えたことで、日本だけではなく、地球全体の歴史を知る必要が出てきました。

とはいえ、世界史は範囲も広く、どこから手をつければ良いか、わからないですよね。

分量も多くて、なんだかムズかしそう。。

そこでおすすめしたいのが、大手出版社から出ている「シリーズ本」を読むこと。

なかでも、こちらのシリーズは、さいしょに手にとってほしいです。

中央公論社が出した「世界の歴史」シリーズで「旧版」にあたるものです。

中公は、2000年代に、あらたに「世界の歴史」シリーズを刊行しました。

こちらを「新版」とよび、以前のシリーズは「旧版」といわれます。

じつは〝読みやすさ〟でいえば、「旧版」のほうがすぐれています。

「新版」のほうは、どちらかといえば「研究者」「玄人」むけ。

世界史の流れを理解・把握するには適していません。

すでに絶版なのが難点ですが、古本屋 or ネット通販をつかってゲットしてほしいと思います。

その点をふまえて、きょうは、第1巻にあたる

を紹介したいと思います。

第1巻では、中国&中東エリア、古代時代をあつかいます。

『世界の歴史 1 ─ 古代文明の発見』(中公・旧版)の概要

まずは目次から。

こんなかんじです。(※ こちらの都合で、番号をふりました。)

1 北京猿人の発見
2 土器たちは語る
3 大いなる都
4 天命をになった西周王朝
5 覇者の時代 ─ 春秋時代
6 実力闘争の時代 ─ 戦国時代
7 独裁者・秦始皇帝
8 実用主義の政治 ─ 前漢
9 理想の儒教国家 ─後漢
10 東と西をむすぶもの ─インダス文明の発見
11 発掘と解読の物語
12 歴史はシュメールにはじまる
13 ナイルと太陽の国
14 諸民族の交響とペルシャ帝国の出現

1〜9で、中国地域をあつかいます。

北京原人のくらしにスポットをあてつつ、「文明のおこり」から中国王朝がつくられる過程をみていきます。

10で「インダス文明」をふれたあと、11〜14で、中東地域=古代オリエントの歴史をたどっていきます。

やや、中国エリアにかたよっているようにみえますが、世界史の導入としては、わかりやすいです。

『世界の歴史 1 ─ 古代文明の発見』(中公・旧版)の詳細

以下、気になったトコを、カンタンにのべていきます。

中国初の成分法

さいしょに中国を統一するのは「秦」の皇帝(=始皇帝)です。

そのまえは混乱状態でした。「春秋時代」「戦国時代」とよばれます。

BC.632年〜546年まで、

・北部 → 晋
・南部 → 楚

が、それぞれの地域をおさめます。

「晋」「楚」が南北を統治するいっぽう、コロコロ入れかわるかたちで、中部エリアを小国がおさめるようになります。

情勢が安定しないなか、統一・平和の動きが出てきます。

中部地域の一部をおさめる「宋」が、仲介役となり、南北両国を和解させようとします。

そのとき活躍したのが、交渉にあたった、小国の外交官たちでした。

かれらは平和・安定のために、それぞれの国が有利になるよう、さまざま方針・政策を打ち出します。

なかでも有名なのが、「子産(しさん)」です。

小国「鄭(てい)」につかえていたかれは、自国周辺を安定させるため、交渉・外交にあたります。

そのさい、各国の統治についてルールを定め、公布します。

「青銅」に銘文を彫ったもので、これが中国初の成分法となります。

子産は前536年、成文法を制定して、青銅のカナエに銘文として鋳こみ、一般に公布した。これが中国における成文法公布の最初だといわれている。(p.155)

中国の政治にとって、大きな進歩でした。

それまでは、部族・豪族からなる都市国家が、それぞれのエリアをおさめていました。

成分法の作成・公布をキッカケに、中央集権化がすすみ、規模の大きい領土国家が、中国全体を統治するようになります。

中東エリアでは、だいぶまえになされていましたが、ほかの地域にくらべると、わりと早い段階で、統合のキッカケをつかみます。

従来の部族自治の都市国家から、集権的な領土国家になる変革の一つの過程であろう。(p.155)

やはり思うのは、エリアの混乱がおこればおこるほど、ルールを定め、統一・統合の動きが加速する、ということ。

これは中国にかぎらず、ほかの地域にもいえることです。

子産=啓蒙思想家

そして、状況・環境の改善にもとめるかたちで、偉人があらわれる、ということ。

それまでは「宗教」を軸に、国がまわっていました。

けれど成分法ができたあとは、政治 / 宗教が分けられ、さらに、学問 / 宗教も分化していきます。

その立役者が「子産」で、近代ヨーロッパで活躍した啓蒙思想家と同じくらいの事業を成し遂げました。

中国史において、たいへん重要な人物です。

子産は、中国古代思想上、周公・召公につぐ、第二の偉大な啓蒙主義者だということができる。この啓蒙主義思想が基礎となって、春秋中期を特徴づける賢人政治が生まれた。こうして、祭祀共同体の神権政治であった都市国家の基礎が、ようやく動揺し、政治と宗教が分化し、学問も宗教から分離しだした。このことは同時に、春秋後期における貴族政治の崩壊と、官僚政治の先駆けをなすものであった。(p.156)

その後、「秦」の皇帝(=始皇帝)が、中国全土の統一を果たします。

「郡県制」を採用することで、全国をじかに統治していきますが、その土台・キッカケをつくったのが、春秋時代・中期に活躍した「子産」です。

偉業はすべて、過去の積みかさね、歴史の蓄積とわかりますね。

通史をみると、その点がよくわかります。

アッシリア帝国による統合

いっぽうの中東エリア。

こちらも早い段階では、統合をすすめる王朝があらわれました。

BC.1000年代に誕生した「アッシリア帝国」です。

古代オリエント史の流れ

古代中東地域=古代オリエント史の流れを、ざっくりみると、こんなかんじです。

・BC.2000年代〜:民族移動&新国家建設

・BC.1000年代〜:アッシリア帝国による統合

・BC.500年代〜:ペルシャ帝国によるオリエント世界統一

中国エリアをふくめ、ほかの地域と同じように、小規模の民族が移動をくりかえしながら、各地域に国を築いていきます。

いっぽう、中東エリアでは、すでにBC.1000年代には、統一・統合の動きが加速します。

役割を担ったのが「アッシリア帝国」でした。

統治のしくみ

教科書などでは、BC.500年代の「ペルシャ帝国」が、統一王朝になった、と記されます。

けれど、統治の土台を築いたのは、「アッシリア帝国」でした。

すでに、みずからの領地を、首都 / 地方に分けて、分割統治をおこなっていました。

アッシリア帝王は、この広大な帝国を属州制と臣従王制との二本だてに組織によって支配した。アッシリア本土は、帝王の直轄地とされた。(p.447)

さらに官僚制度を採用し、役職に階級をもうけ、組織による統治をおこなっていました。

首都の宮廷には専制君主を中心として最高軍司令官のタルタヌや、「宮殿の顔」「大酒盃官」などの高官をはじめ、多くの官僚群が、王の手足として働いていた。(p.447)

いまと同じような組織体制をつくり、領土全体を管理していました。

いまのところ「アッシリア帝国」が、人類でイチバンさいしょに「官僚組織」をきずいたといわれています。

すでに、3000年以上まえに、いまと同じような組織づくりがおこなわれたなんて、かなり驚きですね。

租税ルール

さらに、アッシリアの首都は、交易ネットワークの中継地だったため、税のルールも整っていました。

アッシリア人は小王朝時代から通商貿易を重視してきた。西アジアの主要通商路と、その支線はとは、アアッシリア帝国内を通過しており、その重要地点と渡河場には関所がもうけられて、高い通行税が徴収された。(p.447)

交易ネットワークをおさえ、「関税」をとることで、財源を確保していました。

帝国の平時の財源は、通商貿易の繁栄がもたらす通行税の収入と、被征服民族から徴収する納貢金品と、アッシリア人の土地からの「ささげもの」だった。(p.447)

そのほか、おさめる土地からの税(年貢)によって、税収を確保していました。

こんなふうに、すでに中東エリアでは、BC.1000年代〜のころから、官僚組織による統治づくりがなされていました。

このあたりも、ほかのエリアとくらべて、通史を知ってわかること。

世界史のおもしろいところですね。

おわりに

旧版ながら、この「世界の歴史」シリーズは、かなり読みやすく、おすすめです。

ムズかしい用語を、ほとんどつかわず、一般の人がみても、わかるように書かれています。

なにより、知的好奇心をうながすように、歴史をたどるため、読んでいて飽きません。

ざっくり、かつ、ある程度、くわしく世界史の流れを知りたい人には、もってこいの1冊です。

よければチェックしてみてください。

ではまた〜。