どうも、リキゾーです。
このあいだ、波頭亮『成熟日本の進路』を読みました。
著者は、コンサル事業もおこなっているエコノミストです。
タイトルどおり、この本では、成長がとまり成熟した日本のあり方 & これからの指針をあきらかにしていきます。
低成長時代にふさわしい経済のあり方を知りたいひとにはオススメです。
目次
1. 内容
要点はこんなかんじ。
- 低成長におちいった要因
- 成熟期にふさわしいビジョン
- 成熟にふさわしい経済政策
- 組織改革の提案
ひとつひとつみていきましょう。
低成長におちいった要因
なぜ日本経済は低迷したんでしょうか。
経済成長の要因を以下の3つです。
- 労働力増加率
- 資本ストック
- 技術革新進歩率
これらのかけあわせで、成長率がきまります。
成長は、労働力がどれだけ増えたか +経済活動にどれほど資本が投入されたか + 経済活動の効率性に影響する技術水準の改善度合い できまるということです。
この公式から GDP の数値をみると、なにが要因で経済が低迷したのかがわかります。
まず「労働力」をみると、90年代から労働人口が減っています。
しかも、生活水準があがり、余暇が増えたので労働時間も減りました。
これがひとつ。
つぎに「資本ストック」。
これは「(日本人全体の)貯蓄率」とほぼイコールです。
その数値をみると、これも1995年から減りはじめているのがわかります。
これがふたつめ。
さいごが「技術水準」。これは労働生産性とほぼ同じです。
で、過去の推移をみると、労働生産性は戦後はずっとあがってきました。
けれどバブル崩壊をキッカケに、90−95年代では年率で -3.4% 、95年以降は -1.0% 、2000年以降は 0.1% をつけ、低いままです。
これがみっつめ。
つまり、成長が止まったワケは、人口減少 & 少子高齢化により「労働人口および労働時間」が減り、ならんで「貯蓄率」も減少、さいごは労働生産性を向上させるような技術が生まれたこなかったから──こういえます。
成熟期にふさわしいビジョン
うえのデータのほか、「GDP」「貯蓄率」「技術進歩率」の指標をみると、どの数値も90年代から下がりはじめています。
どのデータからみても、日本経済は、成熟期(=低成長時期)に入っています。むかしのように成長はしないのです。
これまでは、経済政策や税政策は、成長をうながす産業(建築業など)に目ぼしをつけ、優先してサポートしてきました。
しかし、これからは成長を前提にしたビジョンはさけるべきです。
というのも、経済成長を目指す政策では、ムダをうみ、財政を悪化させるからです。
成熟期には、インフラ整備のような成長をうながす政策では成果をえられず、財政を悪化させ、将来世代にツケをまわすからです。
これからは「国民だれもが、医・食・住を保障される」という指針のもと、国をまわしていくほうがベターです。
成熟期には、「食べることの不安」「住むことの不安」「病気になった場合の不安」「老いて介護になったときの不安」の悩みをかかえる人たちがふえます。
失業や病気にみまわれても、「居・食・住」を保障するしくみがあれば、ゆとりをもって生活できます。
成熟期にふさわしい経済政策
うえにあげたビジョンを達成するために、ふさわしい政策を検討してみます。
具体的には、どんな政策でしょうか。
ひとつは、社会福祉サービスをになう産業に焦点をあわせ、積極的にサポートする政策です。
もうひとつは、国際競争に耐えられる分野を発掘し、高付加価値型の産業として育てる策です。
福祉サービス業もだいじですが、国外に目を向けたとき、その産業だけでは不十分です。
経済がグローバル化している以上、「市場メカニズム」をいかした産業育成を必要になります。
2. ひとこと
著者はふだんコンサル事業をおこなっているため、はなしが戦略的です。
産業構造をシフトするトピックでは、「医療・介護サービスをひろげ、海外で稼げる産業を育てるべき」と具体的に提案しています。
はなしがあいまいじゃないので、納得感があります。
経済の話題になると、議員や経済学者がのべると、どうしても抽象的になりがちです。
しかしこの本では、明快なビジョンをかかげ、それにあわせた政策を提言しています。
具体的に、これからの日本経済の指針を考えたいひとには、オススメの一冊です。
よければチェックしてみてください。