【書評】モンタネッリ『ローマの歴史』感想&レビューです。

どうも、りきぞう(@rikizoamaya)です。

大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。

社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。

働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。

働くなかで思うのは、自分の市場価値をアップするには「教養」が大切だということ。

・できるなぁ
・発想がすごいなぁ

と、思う人は、キホン、教養を身につけています。

なかでも、重要なのは「世界史」です。

ここ数年、ビジネスマンの必須知識として「世界史」が注目をあつめています。

ネット時代をむかえ、グローバル化が加速しているからです。

とくに、ヨーロッパ史の流れは、おさえておく必要があります。

グローバル経済は、ヨーロッパから始まったからです。

ヨーロッパの根っこには、古代ローマ文化が流れています。

とはいえ、ローマ史は、分量が多く、すべて知るのはたいへん。

そんなとき、つぎの本をみつけました。

著者は、イタリアの作家さん。

「古代ローマ史」カンケーの本は、たくさんあります。

そのなかで本書は、ローマ史の流れを、ジョーダンまじりに、たのしく描いています。

著者自身、歴史家の書いたローマ史を読んだら、あまりのつまらなさに驚いたといいます。

そこで、ジャーナリスト・作家の知見をいかして、おもしろく、惹きつけるような文体で、執筆したのが本書です。

挑発的ですが、たしかに読んでみると、グイグイひきこまれました。

歴史が苦手な人でも、小説・物語を読むように、ローマ史の流れを知ることはできます。

モンタネッリ『ローマの歴史』の概要

まずは目次から。

こんなかんじです。

ローマの起源
あわれなエトルリア人
農民王
商人王たち
ポルセンナ
SPQR
ピュロス
教育
立身の道
神々 (などなど……)

その時期をあらわす「キーワード」を、章のタイトルにしています。

文庫で540ページ。

分量は多めですが、1章あたり3000文字くらいで、10分もあれば読めてしまいます。

1章、ポツポツと目をとおしていると、いつのまにか、ローマ史全体をつかめるかたちになっています。

知っている人物 or 出来事のトコからチェックしてみても良いと思います。

まえの流れを知らずとも、理解できますので。

モンタネッリ『ローマの歴史』の詳細

以下、引用をあげつつ、気になった箇所をピックアップしてみます。

王政を維持できなかったワケ

さいしょ、ローマは、ほかの国と同じように「王政」をとっていました。

チカラのある国王がトップについて、全体を統治するしくみです。

ローマは、「王政」をすて、「共和政」に移行します。

ほかの本では、ローマ人は「自由意識」が強かったから、といわれます。

いっぽう本書は、民族間のちがいを埋められたから、と指摘します。

当時ローマは、「エトルリア系」&「ラテン – サビーニ系」に分かれていました。

どちらかといえば、前者は「商業」を、後者は「政治」をになっていました。

ひとりの国王では、2つの民族を統合できず、結果、「共和政」を採用することになりました。

王制の機構のどこが故障していたのだろうか。〔……〕ローマ社会を構成する諸民族、諸階級が、うまく融和統合されていなかったのである。ブルジョアジー・富・進歩・技術・商工業を代表する「エトルリア系市民」と、貴族・農業・伝統・元老院・軍団を代表する「ラテン – サビーニ系市民」の根深い反目抗争を、7代にわたる王制は解決できなかった。最後に、元老院が主導権をにぎって、王制を打倒し、共和制をたてた。(071)

やはり、当時から、民族間の争いはあり、それが統治システムにも影響を与えたわけですね。

なぜ、ローマは植民地政策をすすめたのか

「共和政」以降、ローマは植民地政策をすすめ、領土を広げていきます。

その背景には、ローマ市内における人口増加がありました。

平和になり、かつ、豊かになったことで、人口がふくれあがりました。

そのために、ローマの外部に植民地をつくり、国内の「無産階級」を〝食べさせる〟必要があったわけです。

〔……〕ローマは、「保護国」や目下の「同盟国」をつくっても、安心できないことを、よく知っていた。ローマ市の人口増加の圧力もあった。そこで、「植民政策」が採用され、イタリア全土のローマ化が本格的に始まる。敵領は没収され、ローマの無産階級に分配された。(094)

このあたりの経済事情も、いまの社会と、あまりかわりませんよね。。

英雄「スキピオ」への崇拝 → 帝政のキッカケ

ご存知のとおり、このあとローマは「共和政」から「帝政」へ移行します。

さいしょに皇帝の座についたのは、有名なカエサルです。

かれの「カリスマ性」or 「軍事上の偉業」によって、皇帝になれた、という考えがフツーです。

いっぽう、本書では、ローマ市民の気質が変わったことに注目します。

ローマは、ポエニ戦争で、ライバル「カルタゴ」に勝利します。

このとき活躍したのが、軍人「スキピオ」です。

カルタゴを打ち破ったとして、ローマ市民は、スキピオ個人を崇拝するようになります。

それまで、ひとりの個人にたいする「まなさじ」をおさえていたローマ人 ─ 。

しかし、スキピオを崇拝するようになります。

著者は、コレが「帝政」へのキッカケだった、と指摘します。

同じように、帝政への移行を警戒していた、保守派「カトー」の態度を記しながら、こう記します。

〔……〕カトーだけは、ローマ史上はじめて、「公正の審理が妨げられた」と、ぶつぶつ文句を言った。〔……〕かれの不満はもっともだった。かれが告発したのは、個人崇拝のさいしょの兆候である。それが社会を腐敗させ、民主主義を破壊するにいたる。その後のローマ史のあゆみは、かれの洞察と危惧の正しさを、十分に証明している。(192)

もちろん、「五賢帝」など、すぐれた皇帝も登場しますが、カラカラ、ネロなど、「暴君」が現れるのも、このあとです。

その意味では、ポエニ戦争の勝利は、ローマに繁栄をもたらすと同時に、市民にたいして「享楽」と「恐怖」を抱かせるわけです。

「この都は、いまや姦通によって調整される政略結婚の代理店でしかない」(カトー)

カエサルのカリスマ性

ローマ動向を知るには、本書は、とても参考になります。

いっぽうで、個人の性格・特性を知るうえでも役に立ちます。

なかでも、カエサルは、魅力ある文体で、いきいきと描いています。

たとえば、カエサルが、「妻の浮気を許したワケ」を、こんなふうに書きます。

妻の名誉を傷つけた不良少年を、なぜそれほどかばったのか。理由はすぐに明らかになった。クロディウスは、平民代表護民官に立候補して、カエサルがかれを後援するのだ。〔……〕カエサルは、妻の名誉など、そう気にしてはいなかったし、だいいち、クロディウスのおかげで、役に立たなくなった古女房から解放され、新しく結構な姻戚関係をえたわけである。腹の立つことはなにもない。(267)

カエサルの「したたかさ」がわかると同時に、カリスマちっくなかんじも、伝わってきますよね。

ほかにも、「賽は投げられた」と言い放ち、「ルビコン川」を渡ったあと、ローマ国内に軍をすすめたときのシーンは、こんなかんじ。

3月16日、カエサルは軍を城門の外におき、単身ローマに入る。この逆賊は、国法を重じるのである。独裁官の称号を要求、元老院はこれを拒否。ポンペイウスに和平使節をおくれと要求、元老院はこれを拒否。国庫管理権を要求、護民官「ルキウス・メテルス」が拒否権発動。カエサルは「わたしは脅迫の言辞をろうするのはきらいだが、実行するのは簡単だ」と言う。国庫の鍵は、たちまちかれの手にわたる。(284)

「わたしは脅迫の言辞をろうするのはきらいだが、実行するのは簡単だ」─ 。

セリフが、カッコよすぎです(笑)

おわりに

こんなふうに、ローマ史全体をたどりつつ、そのときどきに起きた出来事や、注目すべき人物を描いていきます。

ひきつける文体で、ついついページをめくってしまいます。

具体例も豊富なので、当時のローマが、どんなようすだったのか、手にとるようにわかります。

より具体的に、ローマ史を知りたい方には、おすすめです。

よければチェックしてみてください。

ではまた〜。