どうも、コント作家のりきぞうです。
取りあげるのは、モリエール『病は気から』。
後期のもので、生前最後の作品です。
以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。
ちなみに、鈴木力衛訳で読みました。
以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。
また2000年には、べつの翻訳も出ています。
わりと読みやすいです。
よければチェックしてみてください。
目次
ストーリーの大まかな流れ
あらすじ
病におかされていると思いこむアルガン。
健康なのに医者の言うことはなんでもきく。処方された薬も、ガンガン摂取する。
女中トワネットに止められるが、聞く耳をもたない。
そんななか、むすめアンジェリックはクレアントとの結婚を考えていた。
おなじくアルガンも婚約させるつもりでいたが、その相手は恋人クレアントではなく、ピュルゴン医師の甥トーマ。
理由はもちろん、いつでも自分を診てもらうため。
さらに継母のベリーヌは、結婚をめぐり、むすめと父親が仲たがいし、親子の縁がきれることで、遺産を横どりできるともくろむ。
父の「医者狂い」、継母のたくらみで、結婚を台なしにされそうになるアンジェリック。
クレアントと結ばれるため、女中トワネット、アルガンの弟ベラルドが策をこうじるが……。

ひとこと
モリエール劇では、ひとつのモノ・考えに心酔する人物が登場する。
今回は、自分が病気だと信じこむ男が主人公。
かれの思いこみが、まわりの人たちとギャップを生み、そのズレが笑いをおこしていく。
体調に気をつかい、健康法もこまかい部分まで気にする。
アルガン 〔……〕ピュルゴン先生は、毎朝、部屋のなかで、12歩あるいて、12歩もどれ、とおっしゃったが、縦だか横だか、それをきくのを忘れてしまったわい。
(p.51)
会話するときも、病気にひっかけた話題を口にする。相手に怒りをぶつける場合もこんなかんじ。
アルガン 薬をあと12錠のみ、浣腸を12回しなければ、腹の虫がおさまるもんじゃない。
(p.38)
ひとつの考えにおぼれ、まともな判断ができなくなる。
もうひとつアルガンのおかしさを引き立てるのが、継母ベリーヌの存在。
心配しているとみせかけて、よりいっそうアルガンに自分は病気と思いこませる。早死にしてもらおうとたくらんでいる。
心づかいを愛情とかんちがいし、妻を信じこむすがたが、アルガンをよりこっけいにさせる。
笑いのポイント
笑いのポイントをみていきます。
コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。
この作品ではプロットに注目してみます。
コントのプロットはとてもシンプル。
[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。
パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「反復」だとわかります。
「反復」では、状況や環境が変わっても、それまでと同じアクション、セリフ、出来事をくりかえすようすを描きます。
それによって笑いを引き起こします。
この作品でも、病気だと思いこむアルガンが、まわりの忠告もきかず、医者を信じこみ、薬をたくさん飲む。
このくりかえしが笑いをもたらす。
図にするとこんな感じ。
・医者に心酔
・大量のくすりを服用
アルガン = 病人と思いこむ
また「反復」の手法はセリフのやりとりにもあらわれている。
ピュルゴン先生に見捨てられ、かわりに、医者に変装する女中トワネットがアドバイスをするシーン。
トワネット 揃いも揃って無知なやからばかり。あなたの悪いのは肺臓です。
アルガン 肺臓?
トワネット さよう。どんなご容態ですかな?
アルガン ときどき頭痛がいたします。
トワネット まさしく、それは肺臓です。
アルガン ときおり目がかすむようで
トワネット 肺臓です。
アルガン ときには心臓が苦しくて
トワネット 肺臓です。
アルガン ときには腹がさしこむように痛んで。
トワネット 肺臓です。食欲はおありですかな?
アルガン はい、先生。
トワネット 肺臓です。ぶどう酒を少々たしなまれるでしょうな?
アルガン はい、先生。
トワネット 肺臓です。食後のあと、うつらうつらして、それからぐっすりおやすみになれるでしょう?
アルガン はい、先生。
トワネット 肺臓です。まさしく肺臓です。(……)
(p.127-129)
なにを言われても、おなじセリフをかえす。
アルガンを黙らせる意味もあるが、まったく同じコトバをくりかえすことで、笑いの効果も生みだしている。
このあたりはプロットだけでなく、コトバの反復の例として参考になる。
自分が作品を書くときにも、取りいれたい。
まとめ
こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。
ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。
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