モリエール『粗忽者(そこつ者)』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、モリエール『粗忽者(そこつ者)』。

制作年代は不明ですが、モリエール初期の作品です。

この時期は、一幕ものが多いですが、本作は「5幕」から成り、けっこう長めです。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、鈴木力衛訳、全集本で読みました。

以下、引用のページ番号は、うえのの文献によります。

また2000年には、べつの翻訳も出ています。

わりと読みやすいです。

よければチェックしてみてください。

ストーリーの大まかな流れ

人物

レリー
マスカリーユ……レリーの召し使い
セリー
レアンドル

場所

メッシーナの広場

あらすじ

「セリー」に恋する、「レリー」&「レアンドル」。

レリーはセリーをゲットしようとするが、彼女はドレイの身。

自由にするためには、主人「トリュフェルダン」に大金をはらわないといけない。

手もちのお金がないレリーは途方にくれる。

そこでキテンのきく召し使い「マスカリーユ」にたのみ、作戦をねってもらう。

マスカリーユは、見知らぬ人に、サイフを落とすようにしむけ、そのすきに中身をちょうだいすればいい、とアドバイス。

しかし、マスカリーユが通行人にサイフをおとさせるものの、ひとの良いレリーは、「サイフを落としましたよ」と、本人にかえしてしまう。

失敗におわるレリー&マスカリーユ。

今度は、トリュフェルダンがセリーを売ることを耳にして、そのすきに、セリーを横盗りしようとする作戦に。

マスカリーユがスペイン貴族からの手紙をでっちあげて、トリュフェルダンの関心をそちらにむける。

だが、レリーは、「ドレイの身であるセリーは、わたしたち貴族出身のむすめで、ちかぢか引き取りにいくため、だいじに保護しておいてほしい」という内容をつたえてしまい、ふたたび作戦をおじゃんにしてしまう。

良かれとおもった行動がすべて裏目にでて、召し使いの作戦をことごとく台無しするレリー。

ヘマばかりする主人を見放そうする召し使い「マスカリーユ」。

しかし、悪だくみを成功させたいかれは、なんどもレリーとセリーを引きあわせようとする。

そんななか、異国の地からセリーを追いかけてきた「アンドレス」があらわれて……。

ひとこと

レリー&セリーの恋ばなですが、メインは、レリーのおっちょこちょい。

マスカリーユの「悪だくみ」にたいして、ひとの良いレリーが、よけいなふるまいをして、横やりをいれる。

ジャマばかりをくりかえすようすが、笑いをおこします。

レリーがどんな男なのか。

マスカリーユのつぎのセリフが、その性格を端的にあらわしています。

マスカリーユ あれほどヘマばかりすりゃあ、あと足りないものといえば、死ぬことくらいだけだ(p.102)

「悪漢もの」の喜劇なら、悪だくみをする人物が、作戦がバラそうになることでアタフタするようすや、ワナにしかけられる人物が窮地に追いこまれる状況をえがくことで、笑いをとります。

「悪漢もの」というより「悪漢もののパロディ」 で、悪だくみで敵をダマすまえに、味方からジャマされ、失敗する。

初期の作品とはいえ、かなりヒネリをくわえたつくりになっています。

ちなみに、この劇は興行的にも成功したようで、パリの劇場でも絶賛されたようです。

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。

「交錯」では、セリフやアクションによって真相をかくし、登場人物をカン違いさせる。それによって、スジ違いの発言であったり、行動に出る。

そのようすが見てる人を笑わせる。

この作品でも、悪だくみを考えるマスカリーユが、作戦のなかみをレリーに知らせないことで、横やりをやりを入れられ、結果的に失敗する。

このようすが笑いをひきおこす。

構図 ─ 交錯
悪だくみ = バレない

・マスカリーユの作戦を知らないレリー
・よけいな行動をおこす

悪だくみ = バレる

このパターンをくりかえされ、ストーリーがすすんでいきます。

またプロットの展開として、おなじアクションをかさね、笑いをつくる「反復」というパターンがある。

この作品でも、レリーがヘマはつづけるため、この構図にも近い。

「交錯」と「反復」を、うまくかけ合わせているかんじです。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。