どうも、コント作家のりきぞうです。
きょうも、コント作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、モリエール 『アンフィトリヨン』。
中期の作品です。
アンフィトリヨンとは、ギリシャ神話に登場するアムピトリュオーンのこと。
そののち、古代ローマの劇作家プラウトゥスが、彼を題材に喜劇をつくり、さらにそのシナリオをモリエールが「アンフィトリヨン」としてアレンジしました。
以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。
ちなみに、鈴木力衛訳、全集本で読みました。
以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。
また2000年には、べつの翻訳も出ています。
わりと読みやすいです。
よければチェックしてみてください。
目次
ストーリーの大まかな流れ
人物
ジュピテール……天上界の神
メルキュール……ジュピテールの召使い
アンフィトリヨン
アルクメーヌ……アンフィトリヨンの妻
ソジー……アンフィトリヨンの付き人
場所
アンフィトリヨンの家の前(テーベ)
あらすじ
天上界の神ジュピテールは、おんな好き。
今回も、人間界の女性アルクメーヌに恋をする。彼女の夫アンフィトリヨンに変装して、アプローチをする。
そうとは知らず、戦争のため地元を留守にする夫だったが、決着がつき帰国をはたす。
アンフィトリヨンの付き人ソジーも帰ってくるが、彼のまえに、ジュピテールの召使いメルキュールがあらわれる。
ホンモノのアンフィトリヨンとアルクメーヌを接触させないよう誘導するため、メルキュールは「ソジーの名まえをよこせ」と命ずる。
抵抗するソジーだったが、あまりの強権ぶりに、なくなく自らの存在を引きわたすことに。
ふたりのアンフィトリヨン & ソジーがいると知らない妻アルクメーヌや、まわりの人たち。
みんなの誤解が混乱をまねき……。
ひとこと
喜劇ではよくみる「カン違い劇」ですね。
見た目がおなじ人物を、ふたり配置して、まわりの人たちに誤解をひきおこします。
パターンとしては「双子」「変装」「神の変幻」などがあります。
この喜劇でも、天上界の神ジュピテールが、人間のアンフィトリヨンに化け、妻アルクメーヌや、ホンモノのアンフィトリヨンを混乱させます。
このあとアンフィトリヨンは、妻アルクメーヌが自分と見た目がおなじ男と「寝た」ことを知り、嫉妬に苦しみます。
この苦悩するすがたが笑いを起こしますが、それと対比するかたちで、メルキュールに存在を奪われたソジーも不都合な状況におちいります。
ソジーにも妻クレアンティスがいますが、しかしこちらは、彼女にたいしてメルキュールが魅力を感じず「寝る」ことはしません。
それを知ったソジーは、喜ぶには喜ぶんですが、嫉妬をさせることができたときの「うれしさ」とはちがいます。
メルキュールがヘタに愛情を注がないことへの喜びです。
クレアンティス 〔……〕けさになっても、その穴埋めをするどころか、ひとをさんざんばかにするようなゴタクを並べて、さっさと別れて行ったじゃないの。
ソジー (ひとりで)でかしたぞ、ソジー!
クレアンティス なにさ、それは? わたしはおまえさんに文句をつけているんだよ。あんなことをしておいて、へらへら笑ってすます気かい?
ソジー おれは自分のしたことに満足しているんだよ。
(p.358)
おなじ交錯劇でも、モリエールの場合は、キモチの「機微」みたいものを挿しこむことで、クスッとした笑いをもたらしています。
こういう視点をいれるところが、ユーモアのある/なしをきめるポイントですね。
笑いのポイント
笑いのポイントをみていきます。
コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。
この作品ではプロットに注目してみます。
コントのプロットはとてもシンプル。
[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。
パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。
「交錯」では、真相を知らない登場人物が、スジ違いの言葉をはいたり、行動に出たりする。
そのようすが笑いを引きおこします。
この作品でも、神のふるまいにより、ふたりのアンフィトリヨン&ソジーを知らない人物たちがカン違いする。
それにより、妻の浮気をうたがい、嫉妬に苦しむ。
このながれが観ている人を笑わせる。
図にするとこんな感じ。
ソジー ≠ メルキュール
・妻に嫉妬するアンフィトリヨン
・妻に触れなかったニセモノのソジーに感謝するソジー
アンフィトリヨン=ジュピテール
ソジー=メルキュール
ラストは「アンフィトリヨン=ジュピテール」「ソジー=メルキュール」となり、神が化けていたことに気づく。
けれど、そのときの反応はわりとあっさりしています。
そうそう話を終わらせるあたりは、モリエールらしさかなぁと感じました。
まとめ
こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。
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