ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』感想&レビューです。

出版年 1850年
構成 全64章

どうも、りきぞうです。

きょうも、古典作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』。

ディケンズは、イギリスを代表する小説家。

イギリスでは、夏目漱石と同じくらい有名です。

本書は、かれの中期作品にあたります。

ちなみに、たくさんの翻訳書が出ていますが、わたしは「石塚訳」で読みました。

以下、[あらすじ → おもしろポイント]のながれでみていきます。

ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』のあらすじ

場所

ロンドン&カンタベリー(など)

人物

デイヴィッド・コパフィールド
ベッチィ伯母
ミスター・ペコディー
スティアフォース
アグネス
ユライア・ヒープ
ミコーバー夫妻

あらすじ

シングルマザーのもとで生まれた「コパフィールド」。

女中「ペゴディー」と母親といっしょに生活をおくる。

父は、生まれる直前に亡くなっていた。

しばらくして、夫のいない寂しさから、母親は、マードストンという男と再婚する。

しかし、強権的かつ暴力的な夫をまえに、母も、コパフィールドも、苦しい生活を強いられる。

結果、精神を病んだ母親は亡くなり、コパフィールドは「孤児」の身になる。

それにともない、マードストンの口利きで、炭坑現場へと出稼ぎにおくられる。

けれどあまりの辛さから強制労働の仕事場から抜けだし、いまではただひとりの身内である伯母「ベッチィ」のもとにすがりつく。

コパフィールドも、死んだかれの両親に、良い印象をもっていないベッチィ ─ 。

しかし、ボロ切れ一枚でやってきた甥っ子のまえに同情したかのじょは、養子として引きとることに。

身なりを整え、カンタベリー近くの学校へ入学させる。

下宿先には、弁護士「ウィックフィールド」を住居をえらぶ。

そこには、弁護士のむすめ「アグネス」も同居していた。

同じ年代の少年少女ということで、以後、強い信頼関係で結ばれる。

いっぽう、父親の弁護士のもとには、事務員「ヒープ」が働いていた。

みずからをさげすみ、遠慮がちにふるまっているが、ひそかに弁護士の事務所と、むすめのアグネスをねらっていて……

ひとこと

文庫本で5冊分。

とっても長い物語です。

あらすじは、うえのとおりですが、それでも2巻のはじめまでしかのべていません。

以後、アグネス/ヒープが、善悪のキャラとしてすえられ、おはなしがすすんでいきます。

くわえて、

・同級生「スティアフォース」
・ペゴディーの兄「ミスター・ペゴディー」
・薄幸の夫婦「ミコーバー夫妻」

との関わりが挿入され、物語がフクザツに展開していきます。

めちゃくちゃ長い小説ながら、ディケンズが得意とする〝見事なプロットの展開〟から、
ついつい先を読みすすめてしまいます。

「長いために、退屈」なんてことは、まずありません。

ちなみに本作は、ディケンズ自身の自伝的な要がつよく、ところどころ本人が体験したエピソードが登場します。

そのために、みょうにリアリティがあり、これが本作の魅力にもなっています。

ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』のポイント

おもしろポイントは、つぎの2つです。

  • 楽天家のミコーバー
  • ずる賢い女性たち

それぞれカンタンにみていきます。

楽天家のミコーバー

ディケンズ作品のおもしろさは、そのストーリー展開です。

読んでいて、ほんと飽きることがありません。

いっぽうで、登場人物のキャラも、たいへん魅力があります。

個人的に好きなのは、ミコーバー夫妻です。

とくに、夫のミコーバーは、ほんとにおもしろい。

かれは、底抜けに明るいいっぽうで、経済観念が〝さっぱり〟です。

いつも無謀なビジネス&職業に手を出し、負債を背負ってしまいます。

そのために、コパフィールドにたいして、いつも絶望に満ちた心情をつづる手紙を送ってきます。

ミスター・ミコーバーと奥さんに真心こめて別れを告げた、その夜の最後の瞬間まで、およそミスター・ミコーバーほど上機嫌に浮かれた男をついぞ見たことはなかったのだ。そういう次第だから、翌朝七時にまさか同一人物から〔……〕次のような手紙を受け取ろうとは、ぼくは狐につままれたような気がした。〔……〕

「拝啓 ─
骰子は投げられた万事休す。先刻はお耳に入れませんでしたが、実は送金の当てがはずれました。蒼白な眼に不安の跡を隠し、陽気な仮面をかぶっておりました。耐えるのも屈辱なら、思うのも屈辱、語るのも屈辱といった事情になっては、〔……〕14日後が支払い期日の約束手形を切って、当地で生じた財政上の債務を切り抜けるしかありませんでした。むろん支払い期日が来ても、払えるわけもありません。末は破滅です。稲妻が迫り来て、樹木が倒れるのは必至。 〔……〕コパフィールド君、これは君が受け取る最後の書状となりましょう。敬具。
放逐の身にして文無し ウィルキンズ・ミコーバー」

(2巻 no.3089)

しかしそのいっぽうで、過度なほど楽天家であるために、人生に絶望したかと思ったら、すぐに立ちなおり、ふたたび借金をこさえ、バンバンお金をつかいます。

悲痛な内容の手紙に、ぼくは胸がどきんとしたので、あわてて小さな宿屋めざして駆け出し、ドクター・ストロングの学校へ行く途中で寄り道して、ミスター・ミコーバーに慰めの言葉の一つも掛けてあげようというつもりだった。けれども半ばまで行くと、ミスター・ミコーバー夫妻を後ろの屋上席に乗せたロンドン行きの駅伝馬車とすれ違った。ミスター・ミコーバーはのどかな喜びをまさに絵に描いたような表情をたたえ、奥さんの話にニッコリしては、胸ポケットから酒壜もちらつかせ、紙袋から胡桃をむしゃむしゃと食べているのだった。

(2巻 no.3106)

失望/希望 ─ 過剰に相互にうれゆごく態度が、なんともいえない魅力をはなっています。

コパフィールドの人生に決定的な影響をあたえるわけではありません。

とつぜんひょっこり現れて、不幸な身の上ばなしをうちあける ─

だいじな話をするさいには、直接つたえずに、手紙で真相をのべる ─

などなど。

読了したあと、あたまの片隅にのこるのは、おそらくミコーバーじゃないかなぁと思います。

ずる賢い女性たち

ミコーバーをはじめ、スティアフォース&ミスター・ペゴディーなど、目をひく男性キャラがつぎつぎに登場します。

いっぽうで、女性陣も魅力な人たちがそろっています。

総じていえるのは、どの人物も、みな「ずる賢く」「変人」だということです。

たとえば、コパフィールドを救うことになる伯母「ベッチィ」 ─ 。

かのじょは、みずからが手入れする庭に、馬車がすこしでも侵入すれば、一目散に玄関を飛び出し、馬もろとも追い払います。

〝侵入者〟がやって来ないか、つねに窓から監視しています。

ベッチィ伯母とマードストン姉弟の話し合い(2巻 no.1151)

また、幼少期のコパフィールドを苦しめたマードストンの姉も、ずる賢く、変わり者です。

弟の結婚相手(=コパフィールドの母)の家に居すわり、さらには、家計まで握り、教育方針にまで口を出します。

にもかかわらず、あまりに高飛車な態度に、まわりは反対意見をいえない。

こんなふうに、本作に登場する女性たちは、ほとんどが狡猾(こうかつ)で、〝ひとくせ〟あります。

かのじょたちのずる賢さを楽しむのも、この作品のおもしろさだったりします。

もちろん、いい気分はしませんが。。

まとめ

こんなふうに、プロット&キャラに注目してみていくと、より古典作品をを楽しめます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。

ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた〜。