どうも、りきぞうです。
大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。
社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。
働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。
働くなかで思うのは、自分の市場価値をアップするには「教養」が大切だということ。
「発想がすごいなぁ」
と、思う人は、キホン、教養を身につけています。
なかでも、重要なのは「世界史」です。
ここ数年、ビジネスマンの基礎知識として「世界史」が注目をあつめています。
ネット時代をむかえ、グローバル化が加速しているからです。
外国との交流が増えたことで、日本だけではなく、地球全体の歴史を知る必要が出てきました。
とはいえ、世界史は範囲も広く、どこから手をつければ良いか、わからないですよね。
分量も多くて、なんだかムズかしそう。。
そこでおすすめしたいのが、大手出版社から出ている「シリーズ本」を読むこと。
なかでも、こちらのシリーズは、さいしょに手にとってほしいです。
中央公論社が出した「世界の歴史」シリーズで「旧版」にあたるものです。
中公は、2000年代に、あらたに「世界の歴史」シリーズを刊行しました。
こちらを「新版」とよび、以前のシリーズは「旧版」といわれます。
じつは〝読みやすさ〟でいえば、「旧版」のほうがすぐれています。
「新版」のほうは、どちらかといえば「研究者」「玄人」むけ。
世界史の流れを理解・把握するには適していません。
絶版なのが難点ですが、古本屋 or ネット通販をつかってゲットしてほしいと思います。
…
きょうは、第14巻にあたる
を紹介したいと思います。
「14」では、タイトルどおり、第一次大戦を軸にあつかいます。
年代としては、1900年ごろにあたります。
目次
江口朴郎『世界の歴史 14 ─ 第一次大戦後の世界』(中公・旧版)の概要
まずは目次から。
こんなかんじです。(※ こちらの都合で、番号をふりました。)
02 拡大する戦局
03 戦時体制
04 戦時下の知識人
05 アメリカの参戦
06 ロシア革命
07 「民族自決」
08 ドイツの敗戦
09 「平和」の理想と現実
10 社会主義と民族
11 戦勝の哀歓 ─ フランスとイギリス
12 ヴェルサイユ体制のささえ
13 永遠に栄えよ
14 ベニト=ムッソリーニの登場
15 軍閥混戦
16 5・4事件
17 ワシントン体制
18 中国国民党と中国共産党
19 安定から崩壊へ
01〜05では、第一次大戦のなかみについて。
06で、ロシア革命。
07で、ウィルソンによる「十四か条の平和原則」について。
08〜13で、第一次大戦の処理&世界。
14でイタリア、15で日本、17でアメリカ。
16、18で中国をあつかいます。
全体として、文体もカンケツで、読みやすい。
内容については、政治・経済・文化 ─ ジャンルをバランスよくあつかっています。
江口朴郎『世界の歴史 14 ─ 第一次大戦後の世界』(中公・旧版)の詳細
以外、気になったトコをみていきます。
ポイントは、つぎのとおり。
- 敗戦国ドイツの甘さ
- ケマルの〝うまさ〟
- 独裁のめばえ
ひとつひとつ、のべていきます。
敗戦国ドイツの甘さ
第一次大戦でボロボロに負けたドイツ ─ 。
フランスから莫大な賠償金を〝ふっかけ〟られ、のちに「ハイパーインフレ」をおこすなど、経済も崩壊します。
さぞや大戦末期は〝どんよりムード〟がただよっていたかのように思います。
けれどちがいます。
軍事本部の面々は、またまだ〝やれる〟と考えていました。
休戦の申し込みをしても、すぐさま大勢を立てなおし、反撃に出ようとしていました。
まして敵国が要求する
・東ドイツのポーランド人居住地域
の領地なんて、渡すはずはないと考えていました。
ひとり冷静な宰相「マックス公」だけが見ぬいていましたが、首脳部は聞き入れません。
事態がひっぱくしていることに、まったく気づいていなかったのです。
マックスは、いますぐに敵国側に休戦の申し込みをすれば、万事がめちゃくちゃになるということを、口すっぱくして説明した。「軍部はウィルソンの14カ条を基礎とした平和条約をむすびたいといっておられるが、そのさいは、エルザス – ロートリンゲン(アルサス – ロレーヌ)2州と、東ドイツのポーランド人居住地域〔……〕をうしなうことを承知でいられるか」とマックスはたずねた。ところがヒンデンブルクは、「ドイツがそんなにたくさん領土をとられるはずがない」と考えていた。〔……〕なんという甘え考えなのだろう。 (p.198)
この〝タカをくくった甘さ〟が、ドイツをどん底へと導きます。
すこし回復すれば、ふたたび戦争できると考えていたわけです。
このあたりは、戦前の日本陸軍の〝おごり〟に共通しています。
人種・民族カンケーなく、うえに立つ人間が、陥りやすい錯誤だといえます。
ヒンデンブルクとルーデンドルフは、いますぐに休戦しなければならないと要求しておきながら、じつは休戦期間中に部隊を再編成して、できればふたたび戦争をはじめるつもりだったのである。(p.199)
ルーデンドルフらは、一方で無条件降伏にひとしい狼狽した休戦提案をしておきながら、他方では、講和になれば相当の要求を敵側に提出できるし、〔……〕拒絶されれば、最後の1兵まで戦う、と公言していた。(p.199)
ドイツ国民も
まだ〝やれる〟と思っていたのは、軍部指導部だけではありません。
新興産業家をふくめて、ドイツ国民全体が、まだやれると思っていたいました。
〔……〕ドイツの支配勢力の大部分は、いまだに「世界に冠たるドイツ国」という夢をいだきつづけていたし、社会民主党幹部や大衆の大部分までが、「強大なドイツ」という思想に反対ではなかった。(p.201)
第一次大戦まえから、ドイツ(プロイセン)は、ハプスブルク帝国にかわり、自分たちが大陸ヨーロッパを先導していると、自認していました。
この〝うぬぼれ〟が、敗戦へと導いたともいえます。
ケマルの〝うまさ〟
同じ敗戦国でも、トルコは大戦後でも、少ないダメージで切りぬけました。
かしこい指導者「ムスタファ=ケマル」がいたからです。
かれは、名まえだけの「オスマン帝国」にかわり、みずからの指導で国を立てなおしていきます。
青年トルコ団から頭角をあらわし、トルコ共和国を樹立します。
その過程で、こちらが敗戦国になったことをいいことに、手をのばすヨーロッパ諸国を、つぎづきに撃退します。
地域&国家は、こんなかんじ。
・イズミル → ギリシャ
・アデリア → イタリア
・アダナ → フランス
・東北部 → アルメニア
四方をかこむ敵国を、ひとつひとつ倒していきます。
世界は、このムスタファ=ケマルという人物に注目した。〔……〕ケマルはほとんど徒手空拳で、戦争に疲れ果てた貧しい敗戦国民をひきいて、連合国にたいして、ということは、ほとんどの世界にたいして戦いを挑んだことになった。
自分たちの領土である「アナドル高原」さえ、親英派 / 反動分子に分かれていました。
2つのグループをとりまとめ、トルコ共和国として国をかたちづくっていきます。
リアリスト ─ ケマル
ケマルのすごさは、リーダーシップだけではありません。
かれは、ヨーロッパ諸国に対抗するために、「イスラムの民」という旗をたて、団結を呼びかけました。
しかし敵国を追いはらい、国内が安定したあとは、すぐさま「近代化政策」に乗りだしました。
具体的には、
・イスラムの国教化
・アラビア文字
・トルコ帽
の廃止です。
つまり、近代国家への足がかりとして、一時的に、イスラム権威(スルタン)を利用したわけです。
完全独立を達成した、その後のトルコ政治は、アジア・アフリカの回教徒をさらにおどろかせ、今度は考えこませた。「イスラムの地」と「イスラムの民」をまもりぬいたトルコ人が、イスラム諸制度をつぎつぎにはらいのけ、西欧的な国家を建設しはじめたのである。(p.278)
イデオロギーにとられず、めちゃくちゃリアリストだとわかります。
独裁のめばえ
ふたたびドイツ ─ 。
こちらは〝おごり〟によって、敗戦国の道をひたすら歩んでいきます。
経済はめちゃくちゃになり、暮らしも疲弊します。
そこからついに、帝政反動のめばえである「カップ一揆」がおこります。
この事件は、国民全体が、民主制に「ノー」をつきつけた反乱でした。
ドイツの民主政治は、フランス革命と同じように、民衆が〝血をながして〟獲得したものでした。
けれど大戦戦後の生活苦から、民主主義のしくみに疑問をいだくようになります。
帝政への揺り戻しがおこるわけです。
「カップ一揆」は、そのはじまりとなる事件でした。
カップ一揆は、全国にみなぎる共和制反対の機運の強さをしめすとともに、保守帝政派と軍部反動派の無能さをも、示したものであった。明るい未来を望んでいた民主共和国を支持した一般市民は、国内でははげしいインフレの波と生活難に苦しめられ、外国からは国民全体にたいする搾取をうけて、苦い失望を味わっていた。こんなことなら無理に帝政を倒さなさったほうがよかったという後悔の念がおこり、帝政時代のほうが今よりよほどよかったという懐旧の念にかられた。(304)
これが、のちの「ナチス独裁」をうみだす気運を高めていきます。
…
トルコ / ドイツをみると、負けたあとの振る舞い方が、いかに大事がわかります。
おわりに
旧版ながら、この「世界の歴史」シリーズは、かなり読みやすく、おすすめです。
ムズかしい用語を、ほとんどつかわず、一般の人がみても、わかるように書かれています。
なにより、知的好奇心をうながすように、歴史をたどるため、読んでいて飽きません。
ざっくり、かつ、ある程度、くわしく世界史の流れを知りたい人には、もってこいの1冊です。
よければチェックしてみてください。
ではまた〜。

