どうも、りきぞうです。
大学のころから、文学に親しんできました。
大学院時代〜社会人時代にかけても、ひんぱんに作品にあたってきました。
古典作品については、300本以上、読んでいます。
なかでも、プルースト作品には、楽しませてもらいました。
同じように、読んでみようかなぁと思う人もいるかと。
とはいえ、
・どうやったら、作品を楽しめるの?
・読みどころって、どこなの?
─ こんな悩み&疑問をいだく人も多いはず。
そこで、この記事では、プルースト作品の要約&読み方のコツを紹介していきたいと思います。
結論を先にいうと、つぎのとおり。
りきぞう
・さわりをみたあと、好きそうなチャプターにすすむと良い
・個人的には、[第1編 第2部 → 第2編 → 第6編 → 第7編]の順が、おすすめ
プルーストといえば、ご存知のとおり、『失われた時を求めて』が主著になります。
最近の翻訳では、文庫本で「14冊」の分量にのぼります。
めちゃくちゃ長いですね。
構成は、つぎのとおり。
・第1部「コンブレー」
・第2部「スワンの恋」
・第3部「土地の名、名」
第2篇 花咲く乙女たちのかげに(1917年)
・第1部「スワン夫人をめぐって」
・第2部「土地の名、土地」
第3篇 ゲルマントのほう(1921年)
・第1部「ゲルマントのほう Ⅰ」
・第2部「ゲルマントのほう Ⅱ」
第4篇 ソドムとゴモラ(1922年)
・第1部「ソドムとゴモラ Ⅰ」
・第2部「ソドムとゴモラ Ⅱ」
第5篇 囚われの女(1923年)
第6篇 消え去ったアルベルチーヌ(逃げ去る女)(1925年)
第7篇 見出された時 (1927年)
挫折せずに読むポイントは、さいしょから順々に進まないことです。
かなりの確率で、挫折します(笑)
というのも、ふつうの小説とちがって、ストーリー性を重視していないからです。
どちらかといえば、主人公「私」が、さまざま現象・出来事にふれて、思考・考察していくエッセイにちかいです。
なので、物語として読むと、退屈になって、投げ出してしまいます。
そのため、『失われた時〜』のポイント&チャプターをあらかじめ把握してから、ページをめくるのがベターです。
2回読みとおした経験からいえば、
の順で進むのが良いです。
まず「第1篇」ですが、「第1部」で、有名な「マドレーヌのシーン」からはじまり、語り手の「私」が、過去をふりかえる場面に転換します。
そのまま「第2部」にうつり、「スワンの恋」にはなしがうつります。
こちらは「私」ではなく、知人「スワン」が主人公となっています。
『失われた時〜』は、キホン、「一人称小説」です。
いっぽうこちらは、「スワン」の恋模様を、第三者目線で描いています。
つまり「第1編 第2部」だけは、「三人称小説」なわけです。
そのため、ほかのチャプターにくらべて、ぐっと読みやすくなっています。
ここで『失われた時〜』のテーマ・モチーフにふれておくと、あとのはなしが、アタマに入りやすくなってきます。
…
つぎに、第2篇です。
こちらは、主人公「私」が、失恋したあと、リゾート地で、あらたな恋に出会うおはなしです。
『失われた時〜』独特の、〝一人称目線〟の記述がつづいていきます。
主人公「私」が目にするできごとが描写され、それにたいする思考・考察が記されていく。
『失われた時〜』を読むさいの挫折ポイントはここにあります。
この記述スタイルに慣れないと、本を投げ出すことになります。
とはいえ「第4篇 第2部」では、「リゾート地での恋」ということで、はなしがとっつきやすい。
また、ほかのチャプターにくらべて、文章構造がフクザツではないので、それなりに読んでいけます。
さらに、
・将来の恋人「アルベルチーヌ」
・画家「エルスチール」
などなど、『失われた〜』でキーとなる人物たちが、つぎつぎ登場します。
なので、第2編を読みとおせると、『失われた〜』が一気につかみやすくなります。
その後は、こちらも有名な、第6篇『消え去ったアルベルチーヌ』をラストの『見出された時』でしめると良いかなぁと。
…
ちなみにわたしは、1回目は「井上訳」(ちくま文庫)、2回目は「吉川訳」(岩波文庫)で読みました。
いまから読みはじめるなら、断然「吉川訳」をすすめます。
訳注で、本文にかんする「地図」「写真」をたくさん載せているからです。
そのため文章の内容がイメージでき、意味が理解しやすい。
くわえて、吉川訳は文章の流れがきれいで、『失われた〜』の世界に没頭しやすい工夫がなされています。
とはいえ、訳本については、ご自身でくらべて、自分の感覚にあったものを選んでみてください。
好みがあると思うので。
…
以下、[第1編 第2部」「 第2編」「第6編」「第7編」について、かんたんにふれていきます。
目次
第1編 第2部 スワンの恋
1913年に刊行されました。
1部で、紅茶に浸したマドレーヌを食べたあとに、むかしの記憶がよみがえり、幼いころのエピソードをつづります。
この第2部「スワンの恋」では、同じ語り手が、知人「スワン」のきもちに入りこみます。
そのうえで、15年まえに、スワンが体験した恋もようを、「三人称」で描きます。
いわゆる、ふつうの物語形式をとっているので、読みやすいです。
くわえて、プルーストの思想、本作のテーマなどが、ぼんやりわかります。
なので、さいしょしっかり読むには、おすすめのパートです。
じっさい、フランス本国では、この箇所だけ「単行本」として出版されているそうです。
ちなみに「スワンの恋」を読むと、「恋愛なんか絶対にしたくない」と思います。
うつくしい恋愛というより、ドロドロとした「執念・執着」を扱っているからです。
いったん恋にハマると、ほかのことが目につかず、身うごきがとれない ─ この点をしつこいほど描きます。
「恋愛は、いいや。。」 ─ そう読者に思わせてしまうのが、注目ポイントです(笑)
ちなみに、吉川訳だと「第2巻(全14巻)」で「第1編 第2部 スワンの恋」を収録しています。
第2編 花咲く乙女たちのかげに
1918年に刊行されました。
本編で、プルーストは「ゴングール賞」(=フランス文学でいちばん権威のある賞)を受賞しています。
1部は、パリが舞台。
ジルベルトと恋仲になるが、別れてしまう。
けれど、ヴァントレイユ作曲の「ソナタ」をきき、じょじょに自分をとりもどしていく。
2部では、避暑地「バルベック」に移り、その後のストーリーに大きく関わる人物たちと出会う。
なかでも、
・画家「エルスチール」
・将来の恋人「アルベルチーヌ」
とのつながりが、重要になります。
画家からは〝ものごとをみる視点〟を、アルベルチーヌ(と、その友人たち)からは〝むなしくも心地よい幻想〟を体験し、獲得するからです。
また、描く視点もポイントでして、プルースト独特の、小説描写が、ぞんぶんに発揮されます。
個人的には、ここでハマれば、『失われた〜』の世界に、どっぷりひたれ、あなたに大きな影響をあたえる作品になるはずです。
ちなみに、吉川訳だと「第3巻、第4巻(全14巻)」で「第2編 花咲く乙女たちのかげに」を収録しています。
第6編 消え去ったアルベルチーヌ
1925年に刊行されました。
5篇以降には「タイトル」がつけられず、本タイトルは、後世の人たちが、あとからつけたものです。
アルベルチーヌと恋仲になった語り手 ─ 。
しかし嫉妬ゆえにケンカし、別れてしまう。
かのじょを失ったあとの心情・考察がつづられていきます。
個人的には、『失われた時〜』の主要テーマを、正面から扱っている箇所かなぁと思います。
「失くしたもの」にたいして、ひとは何を思い、どう対処すれぱ良いのか ─ 。
さらに、あれほど苦しめらた執着は、どのように解消されていくのか ─ 。
このことが、本編で深ぼりされます。
こちらも〝一人称目線〟から、思考・思索が、たんたんとつづられていきます。
この時点では、すでにプルーストの世界観に慣れていると思うので、楽しんで読むことができます。
ちなみに、吉川訳だと「第12巻(全14巻)」で「第6編 消え去ったアルベルチーヌ」を収録しています。
第7編 見出された時
死後、1927年に刊行されました。
ネタバレはしたくないので、くわしく語りません。
これまでに出会った人物がつぎつぎ登場し、語り手(&読者)に「時のながれ」を体験させる内容になっています。
ショージキ、これといったできごとは、起こりません。
けれど、副題のとおり、移りゆく時間のなかで、みずからの〝本性〟を発見することになります。
もちろんここであらましを書いても、まったく分からないと思います。
読んではじめて、理解・体感できる ─ それが『失われた時〜』の魅力ですので。
また、より深く体験したいなら、ラストはとっておいてみるのも、良いかなぁと思います。
ちなみに、吉川訳だと「第13巻、第14巻(全14巻)」で「第7編 見出された時」を収録しています。
まとめ
まとめると、
りきぞう
・さわりをみたあと、好きそうなチャプターにすすむと良い
・個人的には、[第1編 第2部 → 第2編 → 第6編 → 第7編]の順が、おすすめ
ぜひ、プルースト『失われた時を求めて』を読むうえで、参考にしてみてください。
ではまた〜。







