モリエール『シチリア人(シシリー人)』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、モリエール 『シチリア人(シシリー人)』。

中期から後期にかけての作品です。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、鈴木力衛訳、全集本で読みました。

以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。

また2000年には、べつの翻訳も出ています。

わりと読みやすいです。

よければチェックしてみてください。

ストーリーの大まかな流れ

人物

アドラスト……フランスの貴族

ドン・ペードル……シチリア人
イシドール……ペードルの奴隷

アリ……アドラストの付き人

場所

メッシナの広場(シチリア)

あらすじ

イシドールに恋するアドラスト。

しかし主人ドン・ペードルに囲われて、彼女はよその男と話すことができない。

そこで召し使いのアリと協力して、邸宅のなかに入りこむ策を練る。

家の外でセレナーデを歌い、自分をアピールしたあと、画家に変装して、肖像画を描くのを口実に、イシドールに接触する。

アリが主人ドン・ペードルを引きつけているうちに、アドラストは想いを打ちあけるが……。

ひとこと

コンパクトな一幕劇。

主人 or 父親にしばれる恋の相手を、ずるがしこい作戦で奪いとるストーリー。

モリエールが得意とする展開ですね。

ほかの作品にふれていると「またか」とおもいますが、会話やセリフで笑わせてくれます。

たとえば、主人ドン・ペードルの邸宅に入りこみ、はじめてアドラストが想い人イシドールにあいさつするシーン。

フランス人であることを言いわけに、自らの国の作法で接する。会うなり、いきなりキスをはじめる。

そのときのやりとり。

ドン・ペードル (イシドールに)このかたがおまえの肖像を描いてくださることになっている。


〔ト書き〕アドラストがあいさつしながらイシドールに接吻すると、ドン・ペードルが言う

ドン・ペードル おや、フランスのおかた、そんなあいさつの仕方ほこの国にありませんぞ。

(p.298)

また、画家に変装したアドラストが、イシドールにポーズをとってもらうシーン。

ここぞとばかりにイチャつくふたりにドン・ペードルのセリフはウィットにとんでいる。

ドン・ペードル ポーズをとらせるのに、たいへんな騒ぎだな、ちゃんとした姿勢がとれないものかね。

(p.299)

またシナリオには、演出の指示がけっこう書きこまれている。

プロットよりも、音楽やダンスに軸をおいた作品だとうかがえます。

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。

「交錯」では、ある人物が、真相を隠したり、ワナをしかける。

それにより、カン違いする人物が、スジ違いのセリフを吐いたり、行動に出たりする。

そのようすが笑いを引き起こす。

この作品でも、アドラストが画家に変装し、主人ドン・ペードルをダマす。すきをついて、イシドールを奪いとる。

このながれが、観ている人を笑わせる。

図にするとこんな感じ。

構図 ─ 交錯
アドラスト = 画家

・ポーズをとらせる口実で、イシドールとイチャつく
・イシドールを奪いさる

アドラスト ≠ 画家

さいしょに言ったとおり、ほかの作品にくらべると、わりとベタなかんじはする。

そのぶん、セリフまわしや、音楽やダンスなどの演出でカバーしている印象。

サクッと楽しみたい人には、おすすめの喜劇です。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。