どうも、コント作家のりきぞうです。
きょうも、コント作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、モリエール『亭主学校』。
制作年代は、1661年頃とされています。
以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。
ちなみに、鈴木力衛訳、全集本で読みました。
以下、引用のページ番号は、うえのの文献によります。
また2000年には、べつの翻訳も出ています。
わりと読みやすいです。
よければチェックしてみてください。
目次
ストーリーの大まかな流れ
人物
イザベル
ヴァレール……イザベルの恋人
スガナレル……イザベルの後見人
レオノール……イザベルの姉
アリスト……スガナレルの弟/レオノールの後見人
場所
パリの広場
あらすじ
後見人として、イザベルを育ててきたスガナレル。
成人となる彼女と結婚を考えている。
とはいえ、イザベルのほうは、ヴァレールに好意をよせている。
スガナレルの「幽閉」により、ヴァレールに想いを伝えられない彼女は、「彼からラブレターをそのまま突き返す」とウソをつき、スガナレルに手紙をたくす。
自分のカノジョにフラれ、ヴァレールに同情したスガナレル。
ダマされているとも知らず、イザベルからのラブレターを、ヴァレールにわたしてしまう。
さらに、直接ヴァレールに会いたいイザベルは、姉のレオノールの名まえを利用する。
スガナレルの兄アリストと婚約する予定なのに、密かにヴァレールに想いをよせるレオノール。
深夜こっそり家を抜け出し、ヴァレールと密会しようとしている ─ スガナレルにこんなはなしをでっち上げる。
ふだんから、レオノールにたいする兄の接し方&寛容な教育方針を非難していたスガナレルは、フィアンセが浮気をはたらき「いい気味だ」と思い、そのまま放っておく。
その不満を見込んだいたイザベルは、レオノールに変装して、みずからヴァレールに会いにいく。
姉のレオノールの密会現場を目撃できるとおもいこんだスガナレルは、彼女のあとを追いかけていき……。

ひとこと
「後見人」の制度&慣習を知らないと、共感できない作品です。
当時のフランスでは、幼いころ、親を失くした子どもにたいして、親族や知人が「後見人」となって育てていました。
さらに独身であれば結婚もできました。
この喜劇でも、イザベルの後見人であるスガナレルは、それまで育てあげた報いだとして、彼女を妻にしようと考えます。
いっぽうの兄アリストも、イザベルの姉レオノールの後見人だが、こちらは心のひろい性格で、弟のように、相手にたいして「妻になれ」と強要しない。
さらに、それまでの教育方針も「ゆるく」、スガナレルのように「きつく」ない。
ストーリーのテーマとして、寛容/厳格が対比され、前者をアリスト&レオノール、後者をスガナレル & イザベルが担っている。
子どもであろうと、恋人であろうと、きびしく接したらどうなるか。
喜劇であるいっぽう、人生訓としても、いろいろ学べます。
いっぽう、イザベルのワナにはまり、まんまとヴァレールに横盗りされたスガナレルが、つぎのようなセリフをはく。
スガナレル 悪魔の化身だって、このいたずら女ほど性悪じゃなかろうて。(……)不幸な男さ、それでもなお女を信じるやつは! どんなたちのいい女だって、かならず悪だくみに長けているんだ。男という男を地獄にたたきこむようにつくられているのが女なんだ。(p.98)
モリエール自身のホンネが見えかくれしているかんじがして、おもしろいですね。
笑いのポイント
笑いのポイントをみていきます。
コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。
この作品ではプロットに注目してみます。
コントのプロットはとてもシンプル。
[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。
パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。
「交錯」では、ひとりの人物が、真相を隠したり、ワナをしかける。それにより、カン違いする人物が、スジ違いのセリフを吐いたり、行動に出たりする。
そのようすが笑いを引きおこす。
この作品でも、イザベルが後見人のスガナレルにワナをしかける。
それにより、自分に好意をよせていると思いこむ彼が、スジ違いのセリフをはいたり、トンチンカンな行動にでる。
このようすが、笑いをさそいます。
図にするとこんな感じ。
・スガナレル、ヴァレールに同情
・気づかずにラブレターをわたす
・レオノールが密会すると思いこむ
・イザベルを家から出してしまう
スガナレル ≠ イザベルの恋人 = ヴァレール
ちなみに、変装したイザベルがヴァレールに会うとき、スガナレルはこんなセリフをはきます。
イザベル (ヴァレールに)静かになさって。ヴァレールさん、人がいますから。あたしイザベルです。
スガナレル (ひとりで)嘘をつけ、牝犬め、あの娘〔レオノール〕じゃないくせに。(……)
イザベル (ヴァレールに)でも正式に結婚して、ふたりで……
ヴァレール ええ、それこそぼくの一生の願いなんです。誓って申しますが、あすになったら、あなたが結婚したいとおっしゃるところへまいりますよ。
スガナレル (ひとりで)かわいそうな間抜けめ! 騙されていやがる。
(p.88)
余裕をかましているかんじが、なんともコッケイ。
テキストベースでもかなり笑えるんで、じっさいステージで演じるとなれば、かなりおもろしくなりそうですよね。
まとめ
こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。
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