モリエール『女房学校』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

きょうも、コント作品をレビューしていきます。

取りあげるのは、モリエール『女房学校』。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、鈴木力衛訳で読みました。

以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。

また2000年には、べつの翻訳も出ています。

わりと読みやすいです。

よければチェックしてみてください。

ストーリーの大まかな流れ

人物

アルノルフ
クリザルト
アニュス……アルノルフの婚約者
オーラス……アニュスに恋する

場所

町の広場

あらすじ

「すれっからし」な女を嫌うアルノルフ。

ずるがしこい女にダマされる男たちをバカにし、自分は「ウブ」で「純粋」なアニュスと婚約したことを自慢する。

はなしをきくクリザルトは「貞操」な妻じゃなくても結婚生活はうまくいく、ヘタに嫉妬するからよくないと反論。

さらに、アルノルフが本名をすてて、新たに「貴族の名まえ」に変えたことも非難する。

クリザルトの忠告を無視するアルノルフだったが、そこに婚約者に好意をよせるオーラスがあらわれる。

ふたりは古くから知り合いだったが、ここ最近は、アルノルフが「貴族名」で名のっていたため、オーラスはアニュスの婚約者がアルノルフとは知らずにいた。

さらにあろうことか、オーラスは、アニュスにアプローチしたことをつたえ、彼女のリアクションもよかったと、アルノルフに自慢する。

あせるアルノルフは、「あの男には近づくな」とアニュスにクギをさすが……。

ひとこと

貞操/奔放をテーマした喜劇。

手練手管にたけ、男を手玉にとる女が、大きらいなアルノルフ。

そんな女にダマされるのを避けるため、あえてウブで、ナイーブな女と結婚しようとする。

どんなに「ぼんやりした」女でも、魅力的な男があらわれれば、コロッとなるが、それでも何とか食い止めようとする。

自分がアニュスの婚約者であることをかくしながら、オーラスにたいして、嫌がらせをはたらく。

くわえて、アニュスにたいしても、貞操をまもるようおさえつける。

しかしその企みはすべて裏目にでてしまう。

このように、テーマもストーリーもわかりやすい作品。

モリエール作品すべてにいえることだが、彼の喜劇では、ひとつの「思想」や「モノ」にたいして過剰に執着するキャラクターが登場する。

この人物がコアになり、ストーリーがすすんでいく。

今回は「貞操」「貞淑」を追いもとめる男が主人公。

「女のみさお」に駆られるアルノルフが笑いを生みだします。

また極端なキャラクターを置くいっぽうで、バランスをもった人物も登場する。

モリエールの作品がどこか教訓的なのも、対立軸になる人があらわれるため。

この劇では、クリザルトがその役割をになう。彼のつぎのセリフは、おそらくモリエールがイチバン言いたかったことじゃないかな?

クリザルト 〔……〕淑徳高い悪女どもは、いつも分別くさい貞節のなかに立てこもって、小さな過失をしでかさない代償に、人を見くだす権利があると思いこみ、夫に忠実でありさえすれば、その分だけ勝手な真似をしても許されるはずだと主張するんです。

(p.160)

さらに、何度もクギをさしていたアニュスが、つぎのような発言をするとき、アルノルフの企みが、どれほどムダだったのかわかる。

アニュス  〔……〕あたしくらいの年頃にもなれば、できることなら、もうばか娘で通したくないんですもの。

(p.172)

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。

「交錯」では、セリフやアクションによって真相をかくし、登場人物をカン違いさせる。それによって、スジ違いの発言であったり、行動に出る。

そのようすが見てる人を笑わせる。

この作品でも、オーラスにたいして、アルノルフが「婚約者」の立場をかくし、ひそかにアニュスとの仲を引き裂こうとする。

しかし、作戦に加わる下男のミスだったり、アニュス自身の純粋な行動により、アルノルフの策はことこどく失敗におわる。

なにも知らないオーラスは、気づかないうちに、アルノルフのワナを回避し、なんなくアニュスにアプローチする。

この展開が笑いをもたらす。

図にするとこんな感じ。

構図 ─ 交錯
アルノルフ ≠ アニュスの婚約者

・下男と協力して、オーラスを追いかえす
・下男のミスで、作戦失敗

アルノルフ = アニュスの婚約者

アルノルフによる策はうまくいかず、最終的には、アルノルフがアニュスの婚約者である事実が、オーラスにバレてしまう。

じつはこのあと、アニュスとの結婚までに、オーラスにはもうひとつの障がいがまちうける。

ぜひ本編を読んで、チェックしてみてください。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。自分でつくるときにも役立ちます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。