ヨーロッパの中世都市─ 成立・構造・特徴・ギルド

どうも、りきぞうです。

大学のころから、世界史に親しんできました。

大学院時代は、本格的に人文書・歴史書にあたってきました。

・ヨーロッパの中世都市について知りたい
・大事なキーワードは?
・この時代のポイントは?

きょうは、この問いに答えていきます。

答えは、つぎのとおり。

キーワード
・遠隔地商業
・地中海商業圏
・北ヨーロッパ商業圏
・シャンパーニュの大市
・特許状
・自治都市
・ロンバルディア同盟
・ハンザ同盟
・ギルド
・メディチ家
・フッガー家
ポイント
・地中海商業圏では「ぜいたく品」が、北ヨーロッパ商業圏では「生活必需品」が取り引きされた

この記事では、つぎの本を参考にしました。

以下、目次に沿って、みていきます。

中世ヨーロッパの都市形成

中世都市の街並み

中世ヨーロッパでは、十字軍遠征の時期に、中世都市が形成されます。

背景には、農業生産の発展がありました。それにより、余剰生産物が増えて、定期市が開かれるようになります。

この定期市のまわりに、商人や手工業者などが定住し、中世都市がつくられていきます。

また、定期市では、ムスリム商人やノルマン人が活発に取り引きをおこない、貨幣経済も復活しました。

東方貿易をふくめ交易の促進には、十字軍遠征が大きくかかわっていました。

交易圏は拡大し、都市にかぎらず、近郊の町から農村にいたるまで遠隔地商業が成立します。

都市と商業は、11世紀〜12世紀にかけて、とくに活発になります。まさに商業の復活であり、学術上「商業ルネサンス」とよばれたりします。

中世ヨーロッパの遠隔地商業

シャンパーニュの大市

遠隔地商業は、3つの領域に分けることができます。

  • 地中海商業圏
  • 北ヨーロッパ商業圏
  • 内陸商業圏

です。

それぞれの特色をみていきます。

地中海商業圏

地中海商業圏では、東方の香辛料・絹織物・綿織物と、南ドイツ産の銀が取り引きされ、奢侈品交易がおこなわれました。

取り引きの仲介を担ったのが、北イタリアの

・ヴェネツィア
・ジェノヴァ
・ピザ

などの海洋都市国家でした。

北イタリアの商人たちが、東方貿易(レヴァント貿易)の主役でした。

また海沿いの都市だけでなく、内陸のミラノやフィレンツェなども、毛織物業や金融業などで大きな利益を得ました。

北ヨーロッパ商業圏

北ヨーロッパ商業圏では、北海&バルト海を中心に、毛皮・木材・毛織物・穀物・海産物などが取り引きされました。

地中海商業圏では奢侈品(ぜいたく品)でしたが、北ヨーロッパ商業圏では生活必需品がメインとなる商品でした。

主な交易地は、北ドイツの

・リューベック
・ハンブルク
・ブレーメン

の3都市です。

また、フランドル地方のブリューゲルやガンも、毛織物業がさかんでした。

内陸商業圏

南部の地中海商業圏、北部の北ヨーロッパ商業圏を仲介してさかえたのが、内陸商業圏でした。

この領域には、各地に都市が形成され、繁栄します。

一覧をあげると、つぎのとおりです。

・フランス北東部 → シャンパーニュ地方
・フランス南部 → リヨン(絹織物業)
・ライン川流域 → ケルン&マインツ
・南ドイツ → アウクスブルク(銀山産業)

なかでもシャンパーニュ地方の大市は有名で、ヨーロッパ各地から商人が集まり、大規模な市場で、活発な取り引きをおこないました。

中世ヨーロッパの都市生活

リューベックとハンブルグの同盟(出典:wiki

さいごに、都市のなかみをみていきましょう。

都市の自治

たくさんの人が集まるため、当然、都市の自治権が存在しました。

中世の都市は、まわりを城壁でかこみ、その周辺に5,000人〜10,000人程度の人たちが暮らしていました。

その大半は農民ですが、都市を取りしきっていたのは商工業者たちでした。

かれらは、もともとあたりの土地を所有していた領主と闘争をくりかえし、特許状を得て、自治権を獲得した人たちでした。

かれらのおかげで、中世の街は自治都市へと変貌をとげたのでした。

具体的に、イタリアでは「コムーネ」とよばれる自治都市がつくられ、まわりの農村を吸収しながら、都市国家(都市共和国)へと生まれ変わっていきます。

またドイツでも「帝国都市」とよばれる自治都市ができあがり、皇帝(神聖ローマ皇帝)に直属しながら、地方領主として自立していきました。

そこでは、

「都市の空気は自由にする」

とうたわれ、たとえ農奴であっても、都市に1年&1日住めば、自由身分となることができました。

都市同盟

いっぽう、各都市のあいだでは同盟関係が組まれます。

北イタリアでは、ミラノの盟主とするロンバルディア同盟がむすばれました。

交易の促進が主な目的ですが、そのほか神聖ローマ皇帝によるイタリア政策に対抗するねらいもありました。

北ドイツでは、リューベックを盟主とするハンザ同盟がむすばれます。

加盟都市は100をこえ、北ヨーロッパ商業圏をほぼ独占しました(14世紀ごろ)。

さらに、

・円卓会議
・独自通貨
・度量衡
・法律
・陸軍

までをもち、連合国のようなかたちをとっていました。

じっさいハンザ同盟は、隣国のデンマークに戦争をしかけ、敵方を打ち負かしています。

ギルド

都市の内部では、有名なギルドが形成されていました。

ギルドとは、相互扶助にもとづく同業組合のことで、かれらが都市の市場を独占しました。

商人ギルドは、大商人で構成され、さきにあげた自治権の獲得は、かれらの功績によるところが大きかった。

そのために、都市の行政を担ったのも、かれらでした。

同職ギルドは、手工業の親方たちで構成されます。かれらはツンフトとよばれ、市政を牛耳る商人ギルドと、参政権をめぐり、たびたび対立しました。

商人ギルドとの争いをツンフト闘争とよび、戦いの結果、だんだんと参政権を認められます。

また同職ギルドは徒弟制で、きびしい封建的な身分制度がしかれていました。

◇ 大富豪
都市が発達し、商業が活発になると、そこから富豪といわれる人たちが登場します。

なかでも有名なのが、フィレンツェのメディチ家と、アウクスブルクのフッガー家です。

どちらも、金融業で力をつけ、資産をたくわえていきました。

おわりに

ヨーロッパの中世都市についてみてきました。

まとめると、こんなかんじです。

キーワード
・遠隔地商業
・地中海商業圏
・北ヨーロッパ商業圏
・シャンパーニュの大市
・特許状
・自治都市
・ロンバルディア同盟
・ハンザ同盟
・ギルド
・メディチ家
・フッガー家
ポイント
・地中海商業圏では「ぜいたく品」が、北ヨーロッパ商業圏では「生活必需品」が取り引きされた

この記事が、ヨーロッパの中世都市を理解するさいのヒントになれば、うれしいです。

では、また。