【書評】松本重治『世界の歴史 16 ─ 現代 人類の岐路』(中公・旧版)感想&レビューです。

どうも、りきぞうです。

大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。

社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。

働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。

働くなかで思うのは、自分の市場価値をアップするには「教養」が大切だということ。

「できるなぁ」
「発想がすごいなぁ」

と、思う人は、キホン、教養を身につけています。

なかでも、重要なのは「世界史」です。

ここ数年、ビジネスマンの基礎知識として「世界史」が注目をあつめています。

ネット時代をむかえ、グローバル化が加速しているからです。

外国との交流が増えたことで、日本だけではなく、地球全体の歴史を知る必要が出てきました。

とはいえ、世界史は範囲も広く、どこから手をつければ良いか、わからないですよね。

分量も多くて、なんだかムズかしそう。。

そこでおすすめしたいのが、大手出版社から出ている「シリーズ本」を読むこと。

なかでも、こちらのシリーズは、さいしょに手にとってほしいです。

中央公論社が出した「世界の歴史」シリーズで「旧版」にあたるものです。

中公は、2000年代に、あらたに「世界の歴史」シリーズを刊行しました。

こちらを「新版」とよび、以前のシリーズは「旧版」といわれます。

じつは〝読みやすさ〟でいえば、「旧版」のほうがすぐれています。

「新版」のほうは、どちらかといえば「研究者」「玄人」むけ。

世界史の流れを理解・把握するには適していません。

絶版なのが難点ですが、古本屋 or ネット通販をつかってゲットしてほしいと思います。

きょうは、第16巻にあたる

を紹介したいと思います。

「16」では、第二次大戦後の世界をあつかいます。

年代としては、1950年〜1960年代にあたります。

松本重治『世界の歴史 16 ─ 現代 人類の岐路』(中公・旧版)の概要

まずは目次から。

こんなかんじです。(※ こちらの都合で、番号をふりました。)

01 第二次大戦の余波
02 立ちて歩むアジア
03 科学技術がもたらしたもの
04 冷戦と朝鮮戦争
05 資本主義は変わった
06 戦後のアメリカ
07 挑戦する社会主義圏
08 ヨーロッパの復活
09 新しい生き方・考え方
10 葬られる植民地主義
11 戦争を越えて
12 世界のなかの日本

01で、第二次大戦後の処理。

02&10で、アジア植民地の自立。

03で、科学技術。

04で、冷戦体制と朝鮮戦争について。

05で、高度成長期。

06で、戦後アメリカ。

07で、社会主義のゆくえ。

11&12で、平和構築と日本について。

全体として、文体もカンケツで、読みやすい。

内容については、政治・経済・文化 ─ ジャンルをバランスよくあつかっています。

松本重治『世界の歴史 16 ─ 現代 人類の岐路』(中公・旧版)の詳細

以外、気になったトコをみていきます。

ポイントは、つぎのとおり。

  • イギリスの衰退
  • 中国共産党のめばえ

ひとつひとつ、のべていきます。

イギリスの衰退

第二次大戦では、ドイツ・イタリアが敗北しました。

けれど、打撃をうけたのは、2ヶ国だけではありません。

ヨーロッパ全体が被害をうけました。戦争の舞台が、ヨーロッパだったからです。

戦勝国も同じです。

なかでもイギリスは、大戦を契機に、ここからじょじょに衰退していきます。

もちろん、ナチス相手に、あらゆる手をつくしました。

〔……〕イギリスも早くから、アメリカの弟分としての協力関係をむすばなければならなかった。徹底した闘志でヒトラーを打倒し、イギリス帝国護持の鬼だったチャーチルを首相したイギリスは、〔……〕戦前の地位を回復するために打てるだけの手を打ち、また、打とうとしたことはいうまでもない。(p.21)

とはいえ、勝利にみあった利益を得たとはいえない。

だれの目にも、大英帝国による覇権が、アメリカに移っていることはあきらかでした。

首相「チャーチル」が、なんとか争っても、事態は止められません。

1942年の春、ローズヴェルトがインドに自治をゆるすようすすめたとき、チャーチルは激怒して、〔……〕「自分はイギリス帝国の清算人として総理大臣になったのではない」と、イギリス下院の壇上で宣言した。(p.21)

植民地運営から手をひき、コストを減らす。

その分で、自国の復興にあてるほかありません。

イギリスは「本土決戦」に勝利して生き残ったが、資源を使いつくして、経済の根底からすっかり弱っていた。イギリスは、じょじょに自国の力に応じて海外問題から手をひき、自国の復興に専心するよりほかなかった。(p.22)

第二次大戦は、アメリカしかトクをしなかったといえます。

中国共産党のめばえ

いっぽう、日本軍がひいたあとの中国では、大戦中からすでに、共産主義が躍進していました。

その背景には、ライバルだった「国民党」が、停滞したことにあります。

外交面では、アメリカのマーシャル特使をいうこと聞かずに、暴走。

共産党との争いの焦りから、民衆への弾圧も、強化されます。

なぜ国民党が、政協会議の決定を無視し、マーシャル特使の勧告をしりぞけて、民衆の希望をふみにじる軍事冒険に出たか。それには〔……〕共産党勢力の急速な伸長への恐怖心があったとみるべきである。共産党の影響下にある地域、いわゆる解放区は、戦争の期間に、ものすごく拡大した。〔……〕だからいま、徹底的にたたきつぶしてしまわないといけない、という追い詰められた気持ちが、国民党を支配したのである。(p.73)

それにより国民党は、人びとからの支持をじょじょにうしなっていきます。

地方から勢力をのばす

かたや共産党は、

・日本軍
・国民軍

が撤退したあと、〝草の根〟で、自然・自発的に組織化 ─ 。

農村を中心に、サポートをあつめるようになります。

地方では、2つの軍が去ったあと、空白をうめるように、共産党が手をのばしていきました。

さいしょは自治政府のようなものでしたが、じょじょにかたちある共産党政府へと変わっていきます。

日本軍が進撃すると、通常、まっさきに国民党の軍団が退却する。つぎに、官史や商人も逃亡する。金持ちや大地主も逃亡する。逃げる資力のない中農以下の農民だけがのこることになる。どんな社会でも組織は必要だから、政府がなくなれば、自分で政府をつくらなくてはならない。(p.74)

これが、歴史でいうところの「解放区」のめばえにつながります。

銀行も設立

さらには、銀行まで設立され、小さな経済圏もうまれます。

通貨「人民券」にたいする信用もうまれ、市場がまわりまじめます。

戦時中の中国には、3種類の通貨があった。日本の現地政府が発行したもの、国民政府の銀行券、それから中共の人民券である。〔……〕概していうと、日本 → 国府 → 中共の順に、紙質・印刷がよかった。そして信用の度合いは逆だった。時期がくだるにつれて、ますますその差がひらいた。(p.79)

信用をためるためには、銀行が、かりに襲われたときに、いつでも担保となるモノが取り出せるように、警戒していました。

じっさい、逃げて守るケースもあります。

はじめは解放区でも、人民券の評判はあまりよくなかった。それがしだいに信用をえて、交換比率で競争者に勝つようになったのは、発券銀行に周到な準備があった。人民銀行券は、貴金属や農産物でじゅうぶんな裏づけをもっていた。(p.79)

背後にこういう苦労があったから、人民券の信用度ができあがることに。

こうして、地方を中心に、共産党政府のチカラが伸びていきます。

結果は、ご存知のとおりです。

このまま共産党が政権をとり、国民党は台湾へと渡りました。

意外なのは、初期のころから、共産党は市場経済をちゃんと導入していることです。

たんなる「共産主義」とはいえない理由は、このあたりにルーツがありそうです。

改革解放によって、中国共産党は、市場経済を導入しました。

けれどそもそものはじまりにおいて、中国にはマーケット意識が根づいていたとわかります。

おわりに

旧版ながら、この「世界の歴史」シリーズは、かなり読みやすく、おすすめです。

ムズかしい用語を、ほとんどつかわず、一般の人がみても、わかるように書かれています。

なにより、知的好奇心をうながすように、歴史をたどるため、読んでいて飽きません。

ざっくり、かつ、ある程度、くわしく世界史の流れを知りたい人には、もってこいの1冊です。

よければチェックしてみてください。

ではまた〜。