出版年 | 1859年 |
目次 |
第一部 人生に甦る 第二部 金の糸 第三部 嵐のあと |
どうも、りきぞうです。
きょうも、古典作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、ディケンズ『二都物語』。
ディケンズは、イギリスを代表する小説家。
イギリスでは、夏目漱石と同じくらい有名です。
本書は、かれの後期作品にあたります。
以下、[あらすじ → おもしろポイント]のながれでみていきます。
目次
ディケンズ『二都物語』のあらすじ
場所
イギリス&フランス
人物
ダーネイ氏
ルーシー
マネット医師
ローリー氏
カートン氏
ドファルジュ夫妻
あらすじ
フランス人の「ダーネイ氏」。
イギリスに帰化したかれだったが、アメリカとの密輸疑惑で、裁判にかけられる。
恋人「ルーシー」、その父「マネット医師」の働きもあり、なんとか有罪をまぬがれる。
いっぽう、マネット医師もまたフランス人で、イギリスに亡命するかたちで暮らしていた。
青年時代、フランス本国で〝残酷は行為〟をうけ、ちょっとした記憶障害におちいっていた。
裁判からしばらくして、ダーネイ氏は、マネットとの結婚を決意する。
プロポーズのまえに、かれは、父親のマネット医師に了承をとりにうかがう。
結婚には賛成するマネット医師だったが、じぶんが認めるまで、ダーネイ氏の家系・出生については、むすめに明かさないでほしい、とたのむ。
じつはダーネイ氏の家系は、フランスで、広大な領地をもつ貴族だった。
けれどかれは、特権を利用して、民衆に不当な圧力をくわえる貴族階級に、違和感をおぼえる。
反発心から貴族の身分を投げすて、イギリスに渡り、じぶんのチカラで生計を立てていた。
そんなかれの生い立ちを知ってか、マネット医師は、ダーネイ氏の出生をだれにも教えないかわりに、かれとむすめの結婚をみとめる。
それから数年後。
フランス本国で革命が勃発 ─ 。
貴族にたいする民衆の不満が爆発し、上流階級の人びとは、はげしい粛清にあう。
そんななか、フランスにいる元執事から、ダーネイ氏のもとに、「不当逮捕によってつかまった自分を、助けてほしい」とする内容の手紙が届く。
貴族への殺害・排除がつづくなか、元貴族で自分に責任を感じたダーネイ氏は、妻のマネットと、むすめをおいて、フランス本国へ帰国するが……
ひとこと
ストーリーの軸は、ダーネイ氏の家系と、マネット医師のカンケー。
過去、マネット医師が、ダーネイ氏一族からうけた残虐行為が、物語のカギになります。
記憶障害がありながら、ダーネイ氏一族のふるまいをゆるしているマネット医師 ─ 。
しかしフランス本国では、たとえダーネイ氏が上流階級の身分をなげすて、イギリスに渡ったとしても、貴族の血にうまれた者を許すことはありません。
こんな状況下でも、ダーネイ氏は、仲間を助けるために、フランスへ帰国します。
そこでの争いとかけひきが、ストーリーをひっぱっていきます。
ディケンズ『二都物語』のポイント
おもしろポイントは、つぎの2つです。
- 親族からの負の遺産
- ドファルジュ夫人の残忍さ
それぞれカンタンにみていきます。
親族からの負の遺産
はなしのポイントは、親族がおこなった不当行為・残虐行為に、子孫は責任をおう必要があるのか、という点 ─ 。
もちろんいまの法体系では、親の罪が、むすこ・むすめに、くだることはありません。
しかし小説の舞台は、フランス革命時。
貴族にたいする民衆の不満が、吹き荒れている時期です。
すこしでも貴族からの恩恵を受けていたり、血をひいているだけでも憎悪の対象となり、殺害・粛清されます。
人びとの立場が逆転するなかで、みずからの正しさをつらぬき、切り抜けることができるのか ─ 本書の読みどころは、まさにここです。
そのさいに、ダーネイ氏にかかわる人物がフクスウ登場します。
かれに味方する者が、妻「マネット」、その父「マネット医師」、実業家「ローリー氏」などなど。
かれらの活躍があって、ダーネイ氏は救われていきます。
なかでも、イチバン大事な人物が、ダーネイ氏にそっくりな顔をしている、弁護士「シドニー・カートン」─ 。
つかみどころがなく、ひょうひょうとしているかれのアクションが、さいごにどんでん返しをもたらす。
カートン氏の動向に注目すると、よりおもしろくストーリーをたどれます。
ドファルジュ夫人の残忍さ
いっぽう、ダーネイ氏の敵になるのが、フランスの民衆たちです。
カギをにぎるのが、反乱グループをひきいるドファルジュ夫妻です。
かたちのうえでは夫がグループのリーダーとなっています。
けれど、ほんとうにおそろしい性格の持ちぬしは、妻のドファルジュ夫人です。
かのじょは、マネット医師と同じように、以前、貴族から不当な被害をうけた経験から、上流階級の人びとに、はげしい恨みをいだいています。
その経緯もあってか、貴族にカンケーする人物とあれば、ためらうことなく、裁判を工作し、粛清に追いこみます。
冷徹な態度が、ほんとうにおそろしいです。
ディケンズのキャラづくりがうまいのは、ドファルジュ夫人の身ぶり。
なぜか、いつも「編みもの」をし、敵とわかれば、その名前を布に刻みこむ。
まわりを観察して、貴族にカンケーする者とわかれば、根まわしして、死においこむ。

このキャラ設定は、いまの映画・アニメにも通じるくらい、ゾッとさせ、読んでいる人をおそろしくさせます。
「そのときが来たら、もっと奇妙なことがいくらでも起きるさ」夫人は言った。「ふたりとも、たしかに名前を編みこんだよ。相応の理由があってこうなったんだ。それで充分だろ」
(no.3604)
指が動けば眼も頭も動く。ドファルジュ夫人が女たちの小さな集まりから集まりへと移るにつれ、彼女らのその三つの動きはますます速く、激しくなった。 ドファルジュ氏は店の入口でパイプを吸いながら、感心して眺めていた。「大した女だ。強いし、たくましい。怖ろしいほどたくましい女だ」
(no.3616)
ディケンズは人物設定に定評がありますが、こういうところからも、かれの才能がかいまみえます。
まとめ
こんなふうに、プロット&キャラに注目してみていくと、より古典作品をを楽しめます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。
ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた〜。