どうも、コント作家のりきぞうです。
きょうも、コント作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、チェーホフ『プロポーズ』。
中期の作品です。
以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。
ちなみに、浦訳で読みました。
以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。
目次
ストーリーの大まかな流れ
人物
モーロフ……地主
ナターリア……プロポーズの相手
ナターリアの父
あらすじ
結婚を相手を探す、地主のローモフは、器量もよく家庭的なナターリアに目ぼしをつける。
覚悟を決めたローモフはプロポーズをしに彼女の家を訪れる。
いざ本題に入ろうとしたとき、ふとしたキッカケから彼の牧草地の話題に。
自分の土地だと思っていたところを、ナターリアは自分の家のものだと主張しはじめる。
規則正しいルールを重視するローモフ。
過剰なほど几帳面な彼は、スジの通らない言い分に心臓がバクバクしはじめ、体調をくずす。
結局、お互い譲り合わずケンカ別れに。
しかしローモフが来たのはプロポーズのためだったと、父親がはじめて娘に伝える。
事実を知ったナターリアはバカげた言い争いを後悔。
ローモフをすぐ連れ戻してほしいと涙ながらに訴える。
しぶしぶ戻ってきたローモフに対して、彼女は牧草地が彼のものであると認める。
そうしてプロポーズを引き出そうとする。
しかし今度も、お互いに飼っている犬、どちらが優れているかについて口ゲンカをはじめる。
仲直りしてプロポーズの機会を狙っていたナターリアだったが、ウチの犬のほうが上等だと言い張る。
またもやスジの通らない言い分に混乱するローモフ。
ふたたび心臓がバクバクしはじめ、とうとう倒れてしまう。
その姿にびっくりした親子はあわてて手当をほどこすが……
ひとこと
いまでもありそうなおはなしですね。
主人公「ローモフ」の気の弱さ&こだわりの強さが、なんともいい味を出しています。
キャラクターとしても、おもしろいです。
いっぽうで、そんなかれをホンロウする「ナターリア」と、その父親 ─ 。
それとないズルがしこさをもつふたりも、みていて、なんともおもしろいです。
もちろん、かかわりたくありませんが。。
笑いのポイント
笑いのポイントをみていきます。
コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。
この作品ではプロットに注目してみます。
コントのプロットはとてもシンプル。
[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。
パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

ストーリーを整理していると、ここでは「反復」の構図をとっているとわかる。
「反復」では、状況や環境が変わっても、それまでと同じアクション、セリフ、出来事をくりかえすようすを描きます。
それによって笑いを引きおこします。
この作品でも、強気でいいかげんなナターリア、几帳面で曲がったことが嫌いなローモフ。
相反するふたりのケンカが、くりかえされます。
彼女がしゃべるごとにローモフの不満がつのり、まっすぐなココロを折られる。
「牧草地の所有権」を話しているときも、「飼い犬の優劣」について話しているときも、ナターリアがローモフの言葉につっかかり、彼をゲンナリさせる。
図にすると、こんなかんじ。
・ローモフの訪問の目的を知るナターリア
・ローモフと和解しようとする
・「飼い犬の優劣」でふたたび口論
ナターリア → 口ごたえ → ローモフの体調不良
作品のキモは、父親とナターリアの強情っぷりもさることながら、曲がった事実に直面すると、すぐさまカラダに支障をきたすローモフというキャラ。
すこしでも間違った考えに出くわすと、心臓がバクバクし、肩がブルブル震え、立っていられない。
過剰までに几帳面な性格も、笑いどころです。
ローモフ ぼくは原則を譲れないんです……。ぼくは土地なんか惜しくありません、でも原則は譲れない。(……)ぼくはこんな言い争いをつづけることはできません。心臓がバクバクするんです。
(p.172-173)
彼の機械仕掛けの性格が、まわりとの齟齬を引き起こし、彼の体調までもむしばんでいく。
この軸を繰り返すことで反復の笑いを展開させています。
まとめ
こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。
ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。