どうも、コント作家のりきぞうです。
きょうも、コント作品をレビューしていきます。
取りあげるのは、チェーホフ『熊』。
中期の作品です。
以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。
ちなみに、神西訳で読みました。
以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。
また、さいきん、浦さんの翻訳も出ています。
こちらも読みやすいです。
よければチェックしてみてください。
目次
ストーリーの大まかな流れ
人物
エレーナ……未亡人
スミルーノフ……退役した中尉
場所
エレーナの屋敷
あらすじ
亡き夫への想いをまもるため、人づきあいをひかえるエレーナ。
そこに夫への借金を取りにスミルーノフがやってくる。
手持ちのないエレーナは、あさってに返すといって突きかえす。
けれど、明日までに用意できないと領地を没収されるスミルーノフは「いますぐ返済しろ」とせかす。
あさってにならないと準備できない、そもそも夫を亡くしてちょうど7ヵ月 ─ 。
こんな日に「お金のことなんか考えたくない」と突っぱねる。
あせるスミルーノフは、冷淡なエレーナをののしる。
はなしはとんで、あらゆる女は不まじめで貞操をまもらないと非難する。
スミルーノフ いやはや、なんたる論理だ! 人が金につまって、にっちもさっちも行かず、あわや首っつりの瀬戸ぎわだというのに、あの女ときたら、なんのこったい、金銭のことにかかずらわりたくございませんので、払わないとぬかしやがる!……まさに典型的な女の論理 ─ コルセット論理だ!
(no.145)
長いあいだ、夫のために喪に服しているエレーナは、ついに怒りがおさまらず反論をはじめるが……。

ひとこと
30分くらいで読めるコンパクトな喜劇。
時代をかんじさせず、いまでもあるようなはなし。
おもしろいです。
ストーリーのながれは「逆転劇」。
未亡人のエレーナは「夫への操」をまもるため、オトコとの付きあいを拒む。
また、夫が浮気性だったこともあり、オトコいっぱんを下にみている。
エレーナ (……)その男のなかの一ばん立派な人が、破廉恥きわまるやり口で、わたしをだまし通しだったんですわ! あの人の死んだあとで、恋文が机の引出し一ぱい見つかったばかりか、生きているうちだって ─ ああ 、思い出してもぞっとする ─ あの人は何週間もうちを明けたり、わたしの目の前でよその女を追いまわしたり、女をこしらえたり、わたしのお金をパッパと使ったり、わたしの感情をもてあそんだりしたんです。……それでもやっぱり、わたしはあの人を愛して、貞節をまもっていました。
(no.250)
おなじく、付き合ってきた恋人で苦労したスミルーノフも、オンナをさけずみ、ののしる。
スミルーノフ (……)いちばん鼻もちがならんのは 、そのワニザメが、どうした勘ちがいか知らんが 、恋愛感情こそは、わが最高傑作だ、特権だ、専売特許だ ─ と思いこんでることですよ! なあにわたしは、悪魔にさらわれてもかまわん、ほらあの釘に逆さに吊るされたって、文句はありませんよ ─ もし万一、女がちっちゃなムク犬のほかの誰かを、愛することができたらね!……女の愛なんて、要するにただ、めそめそ泣いたり、すすりあげたりするだけなんです!
(no.231)
こんなふうに、カコにうけたキズを引きずりながら、おたがいに相手をののしり合う。
しかしケンカするなかで、そのトラウマゆえに、相手に魅力をかんじるようになる。
この感情の切り替わりが、笑いをうむ。
出会って数十分のあいだで、異性にたいする主張をくつがえし、キモチを180度ひっくりかえすところに、笑いが生まれる。
ほかにも、貴婦人エレーナが、落ちついた口調で「大声を出さない」で注意する。
けれど、スミルーノフがすこしでも叫んだとたん、言った本人が大声を張り上げる。
エレーナ あの、まことに申しかねますが、こうして一人ぐらしをしておりますものですから、もう長いこと人様の声を聞きなれませんので、とくに大きなお声は、辛抱ができません。
スミルーノフ (……)いったいわたしは、あす利子を払わにゃならんのか、払わんでもいいのか?……それともあんたは、冗談だと思ってるんですか?
エレーナ (……)どうぞお願いですから、そんな大きな声をなさらないで! ここは馬小屋ではございません! (……)あなたは無教育な、不作法なかたです! 教養のある人なら、婦人にむかって、そんな口のききかたはしません!
(no.197)
こんなかんじで、いたるところで「反転」のながれがみられる。
ひっくりかえす笑いに、特化した喜劇といえる。
笑いのポイント
笑いのポイントをみていきます。
コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。
この作品ではプロットに注目してみます。
コントのプロットはとてもシンプル。
[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。
なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。
パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。
感想でも述べたように、「反転」にスポットをあてたような作品。
プロットも、「逆転」の構図をとっている。
「逆転」では、 ひとつの出来事をキッカケに、それまでの立場が反転するようすを描きます。
人物の地位や権威をひっくり返すことで笑いを生み出していきます。
この作品でも、さいしゃおたがいに悪口を言いあっていたふたりが、ケンカしている最中に、相手に魅力をかんじはじめる。
それによって、異性にたいする主張をひっくりかえし、目のまえの相手にホレる。
この反転っぷりが、笑いをもたらす。
図にするとこんな感じ。
・エレーナ & スミルーノフ、おたがいをののしる
・ケンカするなかで魅力をかんじる
・恋をする
異性を嫌う < 異性を好む
お互いに、異性全般の悪口を言いあう。
けれど、さいごは、目のまえの異性を好きになる。
この反転が、笑いをもたらします。
まとめ
こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。
ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。
ちがう記事ものぞいてみてください。
ではまた。
よきコントライフを〜。



