セネカ『幸福な人生について』感想&レビュー ─ 概要・名言

大学院では、人文系にすすみ、哲学・社会学を学んでいました。

社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。

働くなかで思うのは、自分の市場価値をアップするには「教養」が大切だということ。

教養とは、なにか ─ それは、歴史と古典です。

なかでも、哲学分野の古典は、王道といえます。

わたしも、計500冊以上は、読んできました。

そのなかで、きょうは、

セネカ『幸福な人生について』

を紹介していきます。

セネカは、日本でそこまでメジャーではありません。

けれど、西洋哲学に大きな影響を与えています。

ふれておいたほうが、西洋思想を、よりふかく理解できます。

ちなみに翻訳ですが、全集では『倫理論集 Ⅰ』にも入っています。

わたしはうえの文庫に収録しているほうを読みました。

こちらのアクセスしやすいです。

以下のページ番号は、文庫版によります。

セネカ『幸福な人生について』の概要

成立年 58年ごろ
構成 全28節

セネカ後期の作品です。

テーマは、タイトルどおり、幸せな人生について。

兄「アンナエウス」にあてる手紙という形式で書かれています。

まず、

幸せな人生 = 「自然」にかなった人生

と定義します。

そのうえで、「自然」のなかみについて掘りさげ、幸福な人生の特徴をあげていきまふ。

くわえて、

・徳/快楽の対比
・贅沢と幸福のカンケー

など、ふだんわたしたちが思いつきそうなギモンをあげつつ、セネカなりの意見を示していきます。

こちらも、かなりみじかで、実践的なはなしがつづきます。

読んだら、すぐにキモチをきりかえ、生活にとりいれることができる ─ これがセネカ哲学の魅力です。

こちらは、『生の短さについて』(岩波文庫)の1編として収められています。

評価
長さ
(3.0)
難易度
(2.0)
面白さ
(4.0)
おすすめ度
(4.0)

セネカ『幸福な人生について』の名言

以下、本書での「名言」をあげていきます。

まわりと同じ道を歩んでも「幸せ」にはなれない

人生にかんする事柄は、多数の者に人気があるほうがいいというふうにはならない。(p.124)

いきなり〝ガツン〟と殴られます(笑)

とりあえず、まわりに合わせておけば、幸せになれる ─ わたしたちはそう考える。

しかしそれは大嘘。

たとえば日本では30年まえに、[良い学校 → 良い会社 → 良い人生]が、信じられてきました。

このストーリーを信じて、みんなが同じ道をたどっていました。

しかしどうでしょう。

いまどき、こんな〝おはなし〟を信じる人が、どこにいるでしょう?

この例のとおり、まわりと同じ道をたどっても、「幸せ」にはたどりつけないわけです。

それはいまも同じです。

あなたなりの幸せは、外にはなく「内面」にある ─ この事実に、まずは向き合う。

そして、勇気をもって〝世の中の常識〟に背をむけ、みずからの幸せを探るべき ─ セネカはこう促します。

〔……〕この旅路では、もっともよく踏みならされ、また、もっとも人通りの多い道ほど、どれもみなもっとも多く人を迷わせるものである。(p.122) ─ 『幸福な人生について』2節

「幸せ=幸運」ではない

〔……〕なにが不安定といって、運に左右されるものを期待することほど、また、肉体や肉体に影響をおよぼす物質の変動ほど、不安定なものがあるだろうか。(p.148)─ 『幸福な人生について』2節

幸せというと、「幸運」(=ラッキー)と思いがち。

しかし、幸運は幸福ではありません。

幸せとは、快適さ・健やかさがつづく状態をさします。

つまり、一時的なものではなく、継続するものです。

なので、一時的な幸運を期待するのは、バカげています。

たとえ幸運にあやかれたにしても、偶然の波にさらわれてしまう。

なので、幸せを享受するには、快適さをキープさせるのが、コツ。

一気に、人生を変えるのでなく、幸せでありつづけるのが、たいせつ。

持病の通風には、治すよりも軽くする処置をとる。(p.152)─ 『幸福な人生について』17節

「快適さ=快楽」ではない

ひとつ気をつけたいのは、快適さとは「快楽」ではないこと。

快楽もまた、一時的で、持続しないからです。

どんなにおいしい料理でも、3日つづけば、飽きます。

ここを勘違いしていけない。

また、みずからの快楽を肯定しようと、ほかの考え(思想)をもってきて、正当化しようとする人も多い。

セネカの時代なら、「エピクロス派の哲学」が、そうでした。

けれど〝快楽主義〟の烙印をおされるエピクロスは、幸せのために「快楽を追求すべし」などと、一言も述べていません。

むしろ、「快楽は、苦しみをもたらすので、できるかぎり避けよ」と説いています。

不幸への道を正当化するため、幸福にいたる考えをねじ曲げるのは、やめよう ─ セネカは、そう注意をうながします。

〔……〕かれらがぜいたくにふけるのは、 エピクロスに刺激されたわけではない。じつは悪に降参したあげく、自分のぜいたくを哲学のふところに隠し、快楽をほめる声の聞かれる所へ集まるのである。(p.142)─ 『幸福な人生について』12節

おわりに

セネカは、日本でそこまでメジャーではありません。

けれど、西洋哲学に大きな影響を与えています。

ふれておいたほうが、西洋思想を、よりふかく理解できます。

よければ、チェックしてみてください。

ではまた〜。