モリエール『いやいやながら医者にされ』感想&レビューです。

どうも、コント作家のりきぞうです。

取りあげるのは、モリエール 『いやいやながら医者にされ』。

中期の作品です。

以下、ストーリーの大枠をみたあと、笑いのポイントをあげていきます。

ちなみに、鈴木力衛訳で読みました。

以下、引用のページ番号は、うえの文献によります。

また2000年には、べつの翻訳も出ています。

わりと読みやすいです。

よければチェックしてみてください。

ストーリーの大まかな流れ

人物

スガナレル
マルチーヌ……スガナレルの妻

ジェロント

リュカ……ジェロントの召し使い
ヴァレール……ジェロントの召し使い

リュサンド……ジェロントのむすめ
レアンドル……リュサンドの恋人

場所

スガナレルの家 → ジェロントの家

あらすじ

夫婦ゲンカの腹いせに、妻マルチーヌは、夫スガナレルへの仕返しを考える。

そのとき、リュカ & ヴァレールに出くわし、ふたりが仕える家のお嬢さまが口がきけない病気になり、医者をさがしているはなしを聞く。

マルチーヌはコレを仕返しに利用しようと思いつく。

ふたりにスガナレルは「名医」だと思いこませ、夫をこまらせてやろうと考える。

「夫のスガナレルは医者としての身分をかくしたがる」「ただし棒でたたけば、本性をあきらかにする」

スガナレルに会うリュカ & ヴァレール。「自分はただの木こりで医者ではない」と否定するスガナレルを、おもいっきり棒でたたく。

なぐられるのを避けるため、スガナレルはなくなく自分は医者だとみとめる。

そして仕方なく、家のお嬢さまリュサンドの診察をはじめるが……。

ひとこと

「スガナレル = 医者」と思いこむところから、おはなしがスタートする。

ヴァレール 先生のようなかたが、わざと下品にふるまったり、そんな卑しい口をきいて面白がっていられるとは! 先生のように深い学識のある、有名なお医者さまが、人目をしのび、せっかくの才能を埋もれるままにしていらっしゃるとは!

スガナレル (ひとりで)気違いだね、こいつは。

(p.219)

このあと、召し使いのふたりは、リュサンドの父ジェロントにスガナレルを紹介し、むすめを診てもらう。

しかし、リュサンドの恋人レアンドルから、むすめは仮病だと知らさせる。

そのワケは、父親が恋人との結婚に反対し、ほかの男とくっつけさせようとするため。

このあたりはモリエールの劇では定番のながれですね。

とはいえ、主人のジェロントから診察料をもらっている手前、テキトーな診察をくりかえし、対処法をでっちあげる。

ダマすようすが笑いの軸になる。

またアクションの面でも笑いドコがけっこうある。

たとえば、リュサンドの恋人レアンドルが「薬剤師」としてジェロントの家にしのびこみ、ふたりのカンケーがバレないように、スガナレルがジェロントにふるまうシーン。

スガナレル (レアンドルに)さあ、薬剤師さん、あちらへ行って、脈をみてあげなさい。お嬢さんの病気のことで、のちほど相談したいと思うんでね。

〔……〕(ト書き)ここで、スガナレルはジェロントを舞台の端に連れて行き、その肩に手をかける。そしてジェロントが、娘と薬剤師がふたりでいっしょになにをしているかを見ようとするたびに、スガナレルは相手のあごに手をやって、自分のほうへ振り向かせる。〔……〕

(p.250)

ト書き部分が、おもしろい。

テキストベースでも笑えるので、舞台化・映像化すれば、かなり笑いがおこりそうです。

笑いのポイント

笑いのポイントをみていきます。

コントや喜劇で大事なのは、キャラクターとプロット。

この作品ではプロットに注目してみます。

コントのプロットはとてもシンプル。

[設定 → 展開 → オチ]がキホンのながれ。

コントの書き方 ─ プロットの構成について

なかでも「展開」が、作品の良し悪しを決めるんだけど、これにも「型」があります。

パターンは「反転」「逆転」「交錯」の3つです。

コントの書き方 ─ プロットの展開について

ストーリーを整理して、パターンをあてはめてみてると、構図は「交錯」だとわかります。

「交錯」では、ひとりの人物が、真相を隠したり、ワナをしかける。それにより、カン違いする人物が、スジ違いのセリフを吐いたり、行動に出たりする。

そのようすが笑いを引きおこします。

この作品でも、スガナレルが医者に扮して、主人ジェロント、召し使いのリュカ&ヴァレールをダマす。

いいかげんな診察をくだし、テキトーな治療法をでっちあげる。

この展開が笑いをさそいます。

図にするとこんなかんじ。

構図 ─ 交錯
スガナレル=医者

・医者に扮するスガナレル
・診察料をもらう
・テキトーな診察 & 処方をくりかえす

スガナレル ≠ 医者

結果的には、リュサンドとレアンドルが駆け落ちすることで、ジェロントはスガナレルがニセ医者だと気づく(スガナレル ≠ 医者)。

そのために、スガナレルが詐欺の罪で訴えられるが、そこは喜劇。

オチはハッピーエンドで終わります。ぜひ本文でチェックしてみてください。

まとめ

こんなふうに、プロットに注目してみていくと、よりいっそうコントを楽しめます。

ほかの作品でも、こんな視点に立って作品で観ています。ちがう記事ものぞいてみてください。

ではまた。

よきコントライフを〜。