【経済学】「政府による市場の調整」について。

どうも、りきぞう(@rikizoamaya)です。

大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。

社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。

働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。

働くなかで思うのは、自分の市場価値をアップするには「教養」が大切だということ。

「できるなぁ」
「いいアイデアを出すなぁ」

と、言われる人は、キホン、教養を身につけています。

これまでたくさんの古典・学術書を読みあさってきました。

あらためて「核となる知識」をマスターしていきたいと考えています。

ここでは「代表的な古典」&「教養ワード」を紹介していきます。

哲学&経済学から、ビジネスや仕事に役立つ知識を共有していきます。

今回とりあげるのは、コレです。

「政府による市場の調整」

経済学では、基本的な考え方です。

ド定番の教科書、マンキュー『入門経済学』でも、「10大原理」のひとつにあがっています。

以下、つぎのテキストを参考に、くわしく説明していきます。

引用のページは、こちらの本によります。

政府による市場の調整

まえの記事で、市場は効率的に資源を配分するといいました。

とはいえ、いつもうまく機能するわけではありません。バグをおこすときがあります。

そのときに、市場の健全に立てなおすのが、政府の役割です。

具体的には、つぎの3つです。

  1. ① 所有権の保護
  2. ② 効率性の促進
  3. ③ 公平性の確保

以下、ひとつひとつみていきます。

① 所有権の保護

市場では、家計・企業などの参加者が、手もちの資源をベースに、モノ&サービスをやり取りします。

しかし、暴力や権力によって、参加者が自由に自らの資源を取り引きできないとなると、マーケットは成立しなくなります。

交換・取引の前提として、政府による所有権の保護が必要になります。

たとえば、つくった自動車はいずれ奪われるとわかれば、だれも製造しません。つくったウェブサービスが、独占企業に回収されるとわかれば、だれもコードは書きません。

正しくモノ&サービスを交換するには、それぞれの参加者が、自らの資源を自由にあつかえる必要があります。

そのために、参加者の所有権を守る必要があります。

マンキューは、つぎのようにのべます。

〔……〕個々人が希少な資源を所有し、自由にできるための所有権を保護する制度を、市場経済は必要としている。自分の作物が盗まれると予想すれば、農夫は土地を耕さないだろう。顧客が店を出るまえに支払いをすると保証されないかぎり、レストランは食事を提供しないだろう。(019)

N.G.マンキュー『入門経済学(第3版)』

政府は社会の秩序を守るのを第一としますが、市場からみたとき、参加者の所有権を保護する・保証するのが、なにより大事です。

自らの資源を自由につかえないと、モノ&サービスの交換・取引ができないからです。

これがマーケットにたいする政府の役割の1つ目です。

② 効率性の促進

アダム・スミスがのべたように、「見えざる手」=「価格メカニズム」がはたけば、市場は、参加者にたいして効率的に資源を配分します。

資源がまんべんなく行きわたり、より豊かになるよう、モノをつくり、交換・取引することになります。

しかしときに、効率的に資源が配分されない場合があります。いわゆる「市場の失敗」というやつです。

外部性

イチバンの典型は「外部性」です。

「外部性」とは、ある参加者の行為が、ほかの参加者の豊かさ(welfare)に毀損・損害をあたえることです。

わかりやすい例は、工場の大気汚染や、工事現場の大気汚染ですね。

キホン、市場では参加者は自らの資源を自由にあつかえますが、〝好き勝手な〟ふるまいによって、ほかの参加者に予期しないネガティブな影響をあたえるケースがあります。

クルーグマンは、つぎのようにのべます。

個人の行動が、市場では適切に考慮されない副作用を及ぼす。1つの例は、公害を引き起こす行動だ。(022)

P.クルーグマン『ミクロ経済学(第2版)』

支配力

もう1つの典型は、「支配力」です。いわゆる「市場の独占」です。

単独の参加者が、市場で支配力をもつすぎたために、価格を自由にあやつれる状態をさします。

こうなると「価格メカニズム」がはたらかないために、市場は効率的に資源を配分できなくなります。

同じく、クルーグマンは、このようにのべます。

取引の一方の側が、自分の資源の分け前を増やそうとして、相互に有益な取引実現をさまたげる。1つの例は、価格を生産コストよりも高くして、必要としている人に買えなくなるようにしている製薬会社だ。(022)

P.クルーグマン『ミクロ経済学(第2版)』

以上2つのような「バグ」が生じたときに、ふたたび市場の効率性をうながすために、さまざまな対策をとります。

やり方はいろいろですが、「外部性」の問題なら製造の中止であったり、「支配力」の問題なら、取引の禁止などです。

マンキューは、つぎのようにのべています。

通常の場合、見えざる手は、市場を導いて経済のパイを最大にするような資源配分を実現するが、うまくいかないこともある。経済学者は、このように市場の力では効率的に資源配分を実現できない場合を「市場の失敗」と呼んでいる。

N.G.マンキュー『入門経済学(第3版)』

さらにクルーグマンは、もうひとつの「失敗」例をあげています、それは、売り買いに適さない財(サービス)です。

ある種の財は、もともと市場での効率的な処理には適さない性質をもっている。1つの例は、航空管制サービスだ。(023)

P.クルーグマン『ミクロ経済学(第2版)』

③ 公平性の確保

うえにのべた、「外部性」や「市場の独占」もなく、市場が効率的に資源を配分している場合でも問題が生じます。

わかりやすいのは「格差」の問題です。

すべて参加者が、自らの資源を自由に活用しているだけにもかかわらず、収入・報酬に違いが生まれます。

放置しておけば、豊かになる人は「より豊かに」、貧しくなる人は「より貧しく」なります。

「見えざる手」=「価格メカニズム」は自由な交換・取引をうながしますが、市場に参加するときの環境までは保証しません。

カンタンにいえば、市場で交換・取引したいからといって、お金や食べものなどの資源を、あらかじめ与えることはないわけです。

結果の平等はもちろん、機会の平等だって、あたえません。

さいしょから手もちの資源に差があれば、公平に取引できず、効率的に資源を配分できません。

この問題を解決するため、政府が必要になります。

具体的には、収入を公平に分配させる「所得税」であったり、障がいなどのネックをはずす「社会福祉制度」です。

マンキューは、つぎのようにのべています。

見えざる手が効率的な結果をもたらしているような場合でも、経済厚生(welfare)にかんしては顕著な格差をもたらしやすい。〔……〕こうした不平等は、人びとの政治哲学にもよるが、政府の介入を正当化しうるものである。現実には、所得税や社会福祉制度などの多くの公共政策は、経済厚生のより平等な分配を実現することを目的としている。(020-021)

N.G.マンキュー『入門経済学(第3版)』

「政府よる市場の調整」の注意点

「政府よる市場の調整」といっても、「かならず改善できる」というわけではありません。

そもそもどんな優れた政策作成者であっても、マーケットのながれをすべて把握して「立てなおす」はムズかしい。

さらに「悪どい」ことに、自らの利益を引きだすために政策を施す議員や官僚もいます。

こちらは「2時間ドラマ」などで、おなじみですね。

このように、政府による調整といっても、不確定要素が多く、うまくいくとは限りません。

それでも放置しておけば、市場は「バク」を起こすので、うえにあげたような処置が必要なわけです。

おわりに

「政府よる市場の調整」について、みてきました。

マンキュー、クルーグマンともに、最重要ルールとしてあげています。

わりとすんなり理解できますが、ビジネスマンをはじめ、なにかしら策を実施する人にとっては、不可欠な考えです。

知っておいて、損はありません。

ここにあげた記事を参考に、あらゆるシーンで活用してみてください。

きょうあげた知識が、あなたの役立つとうれしいです。

ではまた〜。