どうも、りきぞう(@rikizoamaya)です。
大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。
社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。
働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。
働くなかで思うのは、自分の市場価値をアップするには「教養」が大切だということ。
「いいアイデアを出すなぁ」
と、言われる人は、キホン、教養を身につけています。
これまでたくさんの古典・学術書を読みあさってきました。
あらためて「核となる知識」をマスターしていきたいと考えています。
ここでは「代表的な古典」&「教養ワード」を紹介していきます。
哲学&経済学から、ビジネスや仕事に役立つ知識を共有していきます。
今回とりあげるのは、コレです。
経済学では、最重要ワードのひとつです。
ド定番の教科書、マンキュー『入門経済学』でも、「10大原理」のひとつにあがっています。
以下、つぎのテキストを参考に、くわしく説明していきます。
引用のページは、こちらの本によります。
目次
「機会費用」とは?
機会費用(opportunity cost)とは、欲しいものをゲットするために、あきらめたものを指します。
たとえば、あなたが「1万円」をもっていて、「1万円のバッグ」を買ったとします。
このとき、1万円をもっていたら買えたはずの「クツ」「ライブチケット」「旅行代」が機会費用ということになります。
「あきらめたもの」は「お金」に限らない
「あきらめたもの」は、「お金」だけではありません。
「時間」や「スキル」など、目に見えないものも含まれます。
たとえば、「500円」をもつあなたが、カフェで「500円のラテ」を買って、2時間、英語の勉強をしたとします。
このとき、あなたにかかった費用は「500円」だけではありません。
まず、英語の勉強にあてた「2時間分」も、費用に含まれます。
つまり、時間的なコストです。
さらに、2時間のあいだで習得できた(かもしれない)「英語以外のスキル」も、費用に含まれます。
2時間あれば、「プログラミングの勉強」ができたかもしれませんし、「ダンスの練習」ができたかもしれません。
ほかのトレーニングをしないことで「スキル習得のチャンス」を逃したわけです。
こんなふうに、目にみえず、フツーなら気づきにくいコストを「機会費用」と呼びます。
クルーグマンは、「機会費用」をつぎのようにのべています。
〔……〕欲しいものを手に入れるためにあきらめなければならないもののことを、機会費用と呼んでいる。(010)
P.クルーグマン『ミクロ経済学(第2版)』
さらにいえば、あらゆる商品のコストは、「機会費用」そのものである、とも言い切っています。
ある品目の本当の費用はその機会費用、すなわちそれを得るためにあなたがあきらめなければならないもののことだ。(010)
「機会費用」の具体例
もうすこし具体例をみていきます。
「機会費用」を説明するとき、よく持ちだされる事例は「大学進学」です。
高校を卒業したあなたが、「就職」をせずに、「進学」したとします。
このときにかかる費用は、何でしょうか?
まず、目にみえるコストとしては、「学費」と「生活費」です。
テキスト代や授業料、同級生や先生と食事にいくときの交際費などです。
これはわかりやすい費用ですよね。
じっさい、サイフからお金が出ていくわけですから。
そのいっぽう、目に見えないコストも支払っています。
わかりますか?
ひとつは、大学生活に費やす「時間」です。
日本の場合、短大なら「2年間」、一般大学なら「4年間」通います。
ながい時間を費やしています。
もうひとつは、「お給料」と「職業スキル」です。
もし、高校を卒業したあと、進学せずに、就職していたら、この2つを手にしていたはずです。
もちろん「仮のはなし」です。
とはいえ、「進学 or 就職」の選択肢があるとき、いっぽうを選ばず、もういっぽうを選択しました。
進学を選んだ時点で、「就職で得られたはずの利益」を捨てた(=あきらめた)わけです。
大学進学の事例について、N.G.マンキューは、優秀なスポーツ選手を参考に、つぎのように、のべていますね。
大学生の年頃のスポーツ選手のなかには、大学を中退してプロになれば、何億ドルも稼ぐことができる者もいる。彼らは大学在学の機会費用がきわめて高いことをよく知っている。彼らのなかで大学教育の便益〔メリット〕が費用〔コスト〕に見合わないと考える者が、少なくないのも、無理のないことである。(008)
N.G.マンキュー『入門経済学(第3版)』
このように、ほしいものを得るために、あきらめたものが「機会費用」と呼びます。
「機会費用」は、なぜ重要なのか?
「あたりまえだなぁ」と思うかもしれません。
では、なぜ「機会費用」の考えは、大切なのでしょうか。
理由は2つあります。
① 限られた資源を有効活用するため
たいてい、世の中の資源には限りがあります。
テクノロジーが発達し、いくらでも食料をつくれたり、省力化できるにしても、限界はあります。
イチバンわかりやすいのは「人間の寿命」です。ひとはかならず死を迎えます。
つまり、この世での時間は、有限なわけです。
なので、限られた資源しか持たない人間は、つねに利益を最大化するよう、選択を迫られています。
(すくなくとも経済学では、そう考えます。)
そのためには、ムダなことは省き、費やすコストにビンカンになる必要があります。
「機会費用」の視点をもてば、目にみえない費用も把握でき、資源を有効に活用できるようになります。
これが「機会費用」が重要な理由の1つです。
② 表面的な利益&費用に、目を奪われないため
もうひとつは、表向きのメリットやコストに、ダマされないためです。
どんなに損得計算にたけている人でも、習性上、目のまえの利益と費用に、目を奪われがちです。
じっさい、ふだんの行動しているなかで、自らの費用=コストを、すべて把握している人は少ない。
フクザツすぎて、ムズかしいといったほうが、正しいかもしれません。
〔……〕意思決定にあたっては、さまざまな行動の費用と便益〔メリット〕を比較することが必要である。しかしながら、たいていの場合、1つの行動にともなう費用は、想像以上に不明確である。(007)
N.G.マンキュー『入門経済学(第3版)』
たとえば以前、「アイスクリーム無料配布」のため、長蛇の列に並んでいる人たちが話題になりました。
「タダ欲しさに並ぶなんて、みっともない」と意見もありました。
そのいっぽう、もし「機会費用」の視点をもっていたら、「無料アイス」のために、何時間も並ぶ行動は、そもそも取りません。
並ぶことで「時間」を失い、さらに、「並ぶ時間」でお金を稼げば、アイス分よりも高い収入を得られると気づくからです。
(ちなみに、お金を稼ぐときには、職業スキルも身につきます。)
こんなふうに、「機会費用」を考えをもてば、表面的なソントクに、ダマされなくなります。
これが「機会費用」が大切な理由の2つ目です。
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以上、2つの理由からも、「機会費用」の考えが、大事なのかがわかります。
マンキュー、クルーグマンをはじめ、経済学では、優先度の高い原理しているのも納得できます。
〔……〕あるものを獲得するために放棄したものを、そのものの機会費用と呼ぶ。何らかの意思決定をする場合には、意思決定者は可能な各選択肢に付随する機会費用を認識しなければならない。(008)
N.G.マンキュー『入門経済学(第3版)』
おわりに
教養ワード「機会費用」をみていきました。
「機会費用」の視点は、あらゆる場面で役に立ちます。
個人が、モノやサービスを買うシーンはもちろん、会社組織が、事業に資金を投じるかどうかのときにも参考になります。
たとえば、「Aという事業にお金を入れるかどうか」を判断するさい、その決断のために「何十時間」と会議をくりかえす──。
日本企業にありがちですが、ここでは「時間」「社員の人件費」「はやくに投資をしてたゲットできたはずの利益」を費やしています。
「機会費用」の視点は、利益の最大化につながります。
ここにあげた記事を参考に、あらゆるシーンで活用してみてください。
きょうあげた知識が、あなたの役立つとうれしいです。
ではまた〜。