【経済学】「インセンティブ」って、なに?

どうも、りきぞう(@rikizoamaya)です。

大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。

社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。

働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。

働くなかで思うのは、自分の市場価値をアップするには「教養」が大切だということ。

「できるなぁ」
「いいアイデアを出すなぁ」

と、言われる人は、キホン、教養を身につけています。

これまでたくさんの古典・学術書を読みあさってきました。

あらためて「核となる知識」をマスターしていきたいと考えています。

ここでは「代表的な古典」&「教養ワード」を紹介していきます。

哲学&経済学から、ビジネスや仕事に役立つ知識を共有していきます。

今回とりあげるのは、コレです。

「インセンティブ」

経済学では、最重要ワードのひとつです。

ド定番の教科書、マンキュー『入門経済学』でも、「10大原理」のひとつにあがっています。

以下、つぎのテキストを参考に、くわしく説明していきます。

引用のページは、こちらの本によります。

インセンティブとは?

インセンティブとは、誘因・引導のこと。

人びとに、なにかの行動を引きおこす要因のことです。

より具体的には、メリットのあるほうへ、行動をうながすキッカケともいえます。

ピストルの引き金(トリガー)をイメージするとわかりやすいです。

市場において人びとは、インセンティブによって動かされています。

わかりやすい例は「値段」です。

スーパーで「食パン」を買おうとしていなくても、ふだんより「2割引」になっていたら、おもわず手にしてしまうはず。

ここでは「値引き」が、購買のインセンティブになっています。

理解しやすい概念ですが、よくよく考えてみれば、マーケットでの活動は、たいていはインセンティブによって回っているとわかります。

というか、なにもキッカケなくして、買ったり、投資したりする人のほうがマレです。

マンキューは、ある経済学者のセリフを持ちだして、インセンティブの役割について、こうのべます。

経済学の分野全体が、つぎのように要約できるとまで極言する経済学者もいるほどである ─ 「人々はインセンティブに反応する。残りはすべて、その例証にすぎない。」(011)

人々は、インセンティブをキッカケに行動をおこし、このまえ記事にした、「限界利益」「限界費用」(の差分)を考慮して、ものごとを選択します。

ちなみに、クルーグマンも、つぎのようにのカンタンに定義します。

人々は通常、インセンティブに反応する。すなわり自分が利益を得る機会を追求する。(013)

何であれ、行動を変える人たちに利得を与えるような要因はインセンティブ(誘因)と呼ばれる。(013)

インセンティブの事例

というわけで、事例はいくらでもあります。

メリットのあるほうへ、人の行動をうながすものなら、すべてインセンティブということになるからです。

たとえば、

エンジニアの平均年収 > 弁護士の平均収入

ならば、

プログラミングスクールの入学者数 > 法科大学院の入学者数

となります。

平均年収(の増減)がインセンティブとなり、双方の入学者数に影響をあたえたのです。

たとえば、

ビットコインの価格が急騰する

ならば、

仮想通貨取引所への登録者数がアップ

となります。

仮想通貨価格(の増減)がインセンティブとなり、登録者の数に影響をあたえたのです。

こんなふうに、事例を持ちだせば、キリがありません。

となると、経済学者をはじめて、「インセンティブ」概念の役割としては、人びとにアクションを引きおこしたキッカケを見つける、ということになりそうです。

ショージキ、結果がわかっていれば、だれでも原因・要因を探し、指摘することはできます。

だいじなのは、いまあるものがインセンティブとなって、どんなブームやビジネスを引きおこすか、という視点です。

たとえば、「5G」がひろまるのはわかっていることですが、これがどんな商売や事業のインセンティブになるか、ということです。

事例をたくさんみつけるよりも、ブームのキッカケを探りあてるほうが、よりポジティブな視点で、世の中を理解できます。

インセンティブは、なぜ重要なのか?

インセンティブの概念は理解しやすいですが、なぜ重要なのでしょうか。

それは、市場の動向予測に役立つだからです。

マーケットは、需要と供給を保つことで、成り立っています。

そのさい、なくてはならないのが、人びとの行動を引きおこすインセンティブです。

うえにのべたとおり、インセンティブをキッカケに、ひとりひとりの個人は、メリット / コスト(=限界利益 / 限界費用)を考慮して、ものごとを選択します。

つまり、トク / ソンをつねに意識して、モノを買ったり、売ったりしているわけです。

重要なのは、市場に参加する人みんなが、この視点をベースに取引している、という点です。

Aを買う人が多ければ、値段があがり、そのうち需要が減ります。

Bを買う人が少なければ、値段はさがり、そのうち需要が増えます。

参加者全員が、メリット / コストの視点をベースにしているからこそ、需要と供給に増減がおこり、マーケットの均衡が保つわけです。

そこで「A=X円」、「B=Yドル」と、知らせる(認知させる)のがインセンティブなわけです。

つまり、インセンティブを特定できれば、ある程度、市場の浮き沈みを予測できるわけです。

政策実施者には、不可欠の視点

インセンティブによる市場予測は、政策・対策をおこなう人たちにとっては、なくてはならない視点です。

とくに規模の大きい公共政策では、施策ひとつで、市場のバランスを歪めるかもしれません。

公共政策を立案する人々にとってインセンティブは重要である。公共政策は、しばしば費用と便益を変化させてしまうことによって、彼らの行動をも変化させてしまうからである。

なにがインセンティブになって、どんな購買行動を引きおこすのか ─ 。影響力が大きい策を講じる組織ほど、重要になるわけです。

マンキューは、車の安全性を高めるために施行された「シートベルト法」を引き合いに出し、説明します。

シートベルト法が、合理的なドライバーの費用 / 便益計算を、どのように変えたかを考えてみよう。シートベルトは、負傷したり死亡したりする確率を下げるので、事故の費用を低下させる。したがって、シートベルトはゆっくりと注意深く運転することの便益を低下させるのである。〔……〕スピードを上げて、より軽率な運転をするようになることである。したがって、シートベルト法は事故件数の増大をもたらすのである。(012)

ここでは「シートベルトの装着」が「スピード運転」のインセンティブとなっている。

このように、インセンティブの視点が欠けると、予期せぬ損害をおこしてしまうのです。

これがインセンティブが、重要な理由です。

おわりに

教養ワード「インセンティブ」をみていきました。

マンキュー、クルーグマンともに、最重要ルールとしてあげています。

わりとすんなり理解できますが、ビジネスマンをはじめ、なにかしら策を実施する人にとっては、不可欠な考えです。

知っておいて、損はありません。

ここにあげた記事を参考に、あらゆるシーンで活用してみてください。

きょうあげた知識が、あなたの役立つとうれしいです。

ではまた〜。