どうも、りきぞう(@rikizoamaya)です。
大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。
社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。
働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。
働くなかで思うのは、自分の市場価値をアップするには「教養」が大切だということ。
「いいアイデアを出すなぁ」
と、言われる人は、キホン、教養を身につけています。
これまでたくさんの古典・学術書を読みあさってきました。
あらためて「核となる知識」をマスターしていきたいと考えています。
ここでは「代表的な古典」&「教養ワード」を紹介していきます。
哲学&経済学から、ビジネスや仕事に役立つ知識を共有していきます。
今回とりあげるのは、コレです。
経済学では、最重要ワードのひとつです。
ド定番の教科書、マンキュー『入門経済学』でも、「10大原理」のひとつにあがっています。
以下、つぎのテキストを参考に、くわしく説明していきます。
引用のページは、こちらの本によります。
目次
「限界原理」の前提=合理的な判断

「限界原理」をみるまえに、「合理性」について説明します。
経済学では、「つねに人びとは合理的な行動をとっている」と考えます。
ここでいう「合理的な行動」とは、利益が最大化するように、いまある選択肢のなかから、最適なものを選ぶ、ということです。
注意したいのは、そのときの選び方です。
「合理的な選択」というと、「0か1か」「白か黒か」など、スパッとした行動をイメージします。
しかし、じっさいなにを選ぶときは、このような選び方はしません。
たいてい、なにかを検討するときは、「コレは自分にとって〝どれくらい〟のメリットがあるんだろうか」という視点から、ものごとを選びます。
たとえば、クスリを買うときに、「コレによって、病気が治るのか、それとも治らずに死ぬのか」という判断から、購入するわけではありません。
「コレを飲んだら、〝どれくらい〟熱が下がるのか、それとも、〝ほとんど〟効かないのか」という視点から、購入を決めます。
つまり、「程度」を基準に判断し、ものごとを選択します。
合理的な人は、メリットとコストをくらべて、判断する

「程度」をベースにしつつ、合理的な人は、メリットとコストをくらべて、ものごとを選択します。
たとえば、「1杯300円のレモンハイ」があったとします。
そして、1杯目を飲んだときの満足度が。「1000円」の価値だとします。
「 メリット(1000円) − コスト(300円)」で、「700円」のトクしたことになりました。
つづけて、2杯目。
とうぜん、満足度は下がります。
ここでは「500円」の価値としておきましょう。
すると、「 メリット(500円) − コスト(300円)」で、「200円」のトクしました。
つづけて、3杯目。
さらに満足度は下がります。
ここで「200円」の価値となると、どうでしょう。
「 メリット(200円) − コスト(300円)」で、「100円」のソンになります。
合理的な人は、ここでストップします。
つまり、メリットとコストの増減をみて、判断しているのです。
このように、追加することで得られるメリットを「限界的な便益」、追加することで費やすコストを「限界的な費用」と呼びます。
この例では、「限界便益」は「逓減している(じょじょに減っている)」、「限界費用」は「一定」ということになります。
ちなみに「限界」とは、「marginal」つまり「端っこ」の意味です。
「限界的な便益 or 費用」というときには、「追加される便益 / 費用」というニュアンスになります。
正確にいえば、1単位あたりに増減するメリットを「限界的な便益」、1単位あたりに増減するコストを「限界的な費用」と呼びます。
限定的な変化

「限界便益」「限界費用」をくらべてつつ、まえもって想定したプランに調整をくわえることを、「限定的な変化(marginal changes)」といいます。
たとえば、あした試験というとき、その夜に「1時間」の余裕があったとします。
すると、いつもどおりテレビをみて過ごすのか(=まえもって想定したプラン)、それとも、ガマンして教科書をひらくのか(=プランにたいする調整)などの選択を迫られるはず。
合理的な人は、いまのある選択肢のうち、手もちの資源を〝どれくらい〟配分するかを考えながら、判断し、行動するわけです。
つまり、市場では、自らの利益を最大化するために、2つの便益 / 費用をくらべて、判断します。
テレビをみて「1時間」休むコスト(=限定的な費用)と、教科書をひらいて勉強するメリット(=限定的な便益)をくらべつつ、いちばんトクするために、〝どれくらい〟休み、勉強するか、選択するわけです。
マンキューは、つぎのようにのべます。
〔……〕既存のプランに対して微調整を加えることを、経済学者は限界的な変化と呼ぶ。「限定」とは「端」という意味であることに留意しよう。限界的な変化とは、あなたの行動の端における調整であることになる。合理的な人々は、限界的な便益と限界的な費用とを比較することで、選択をしていることが多い。(009)
N.G.マンキュー『入門経済学(第3版)』
合理的な意思決定者は、行動の限界的な便益が、限界的な費用を上回ったときにのみ、その行動を選択する。(010)
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またクルーグマンは、「限界便益」「限界費用」をくらべて、ものごとを選択することを「限界的決定」と呼び、つぎのように説明します。
何かの活動を、もうちょっとだけ増やすか、あるいは、もうちょっとだけ減らすかの決定は限界的決定である。(012)
P.クルーグマン『ミクロ経済学(第2版)』
「どれだけか」の決定は限界でのトレードオフを行うこと、すなわり、ある活動をもう少し増やすことの費用と便益を、もう少し減らすことの費用と便益を比較することだ。(012)
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限界原理の事例 ①
「限界原理」の考えは、とらえにくいですね(笑)
例を出します。
「50人乗りのバス」があります。東京駅から成田空港まで走らせるときの費用は「50,000円」です。
あなたが経営者なら、乗車料金はいくらにしますか?
すくなくとも赤字を出さないためには、最低でも「1席=1000円」にしないといけません。
「1000円✕50席」で「50,000円」です。トントンですね。
では、もしバスの席が「45席」しかうまらない場合、どうでしょう?
「1席=1000円」以下にしちゃマズいと考えて、チケットを売らずに、そのまま出発しますか?
もちろん、しません。
すこしでも赤字を出さないため、つまり、赤字の金額を増やさないため、「残り5席」の料金を下げるはずです。
(予約状況にあわせて、値段を下げていくでしょう)
このとき、経営者のあなたが何を考えているかといえば、便益と費用をくらべているわけです。
はじめは「1席=1000円」以下にしないと考えていました。
しかし、「残り5席」を空けたまま出発すれば、「5000円」の赤字です。
それなら、値段を下げて、「5000円」の赤字を減らしたほうがいい。
「1席=800円」でチケットが売れれば、「200円✕5席」で「1000円」の赤字に抑えらます。
「1席=400円」で売れれば、「600円✕5席」で「3000円」の赤字です。
つまり、メリットとコスト(=限界的な便益 / 限界的な費用)をくらべて、より利益が最大化するように、想定していたプランを調整しているわけです。
このときの調整を「限界的な変化」と呼んだりします。
限定原理の事例 ②

まだわかりにくいので、もうひとつ事例を。
経済学のテキストで、よく持ちだされるのが「水とダイアモンド」の例です。
人間にとって水は必需品です。なくてはならないモノです。
いっぽう、ダイアモンドは、キレイなだけで、役に立ちません。不要なものです。
なのに、どうして水よりもダイアモンドのほうが高価なんでしょうか。
なぜ人は、水よりも、ダイアモンドのほうに、より多くのお金を払うのか。
「限界原理」の考えでは、こうなります。
それは、ダイアモンドが示す「限界的な便益」のほうが、水の「限界的な便益」よりも大きいからです。
水は豊富にあります。いっぽう、ダイアモンドは希少です。
つまり、水がたくさんあるなかでは、ダイアモンドのほうが「土壇場での便益」が大きいということです。
これは、1単位、追加されるときに、ハッキリします。
水が豊富で、ダイアモンドが希少な状況では、何十トンの水をもらっても、たいしてメリットはありません。
限定的な便益は小さい。
いっぽう、ダイアモンドが希少なときに、1gでもゲットできれば、うれしいはずです。
限定的な便益が大きいわけです。
ここからもわかるとおり、モノの豊富さ / 希少さがカンケーしているわけですが、選択肢が示されているとき、便益 / 費用をくらべつつ、ものごとを選択しているのです。
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「限定原理」の事例を2つあげましたが、それでもムズかしいと思います。
わたしも、何度も経済学のテキストを読んでますが、この「限定原理」のトコが、どうも〝しっくり〟きません。
理解のポイントは、自分なりに事例を考えてみることです。
具体例なエピソードに落しこむと、そのうち分かってくるようになります。
おわりに
教養ワード「限定原理」をみていきました。
マンキュー、クルーグマンともに、最重要ルールとしてあげています。
とはいえ、理解するまでには、けっこう時間がかかります。
どんなに、やさしい参考書を読んでも、自分のアタマで納得するには苦労します。
さきにあげたとおり、自分なりに事例を考えて、具体例なおはなしに落とし込むしかなさそうです。
ムズかしいといっても、個人の選択や、企業の投資行動をとらえるうえで、役に立ちます。
知っておいて、損はありません。
ここにあげた記事を参考に、あらゆるシーンで活用してみてください。
きょうあげた知識が、あなたの役立つとうれしいです。
ではまた〜。

