どうも、りきぞう(@rikizoamaya)です。
大学院では、キャリア論と社会保障を研究していました。
社会人なってからは、予備校講師 → ウェブディレクター → ライターと、いろんな職業にたずさわってきました。
働き方についても、契約社員 → 正社員 → フリーランスと、ひと通り経験してきました。
働くなかで思うのは、自分の市場価値をアップするには「教養」が大切だということ。
「いいアイデアを出すなぁ」
と、言われる人は、キホン、教養を身につけています。
これまでたくさんの古典・学術書を読みあさってきました。
あらためて「核となる知識」をマスターしていきたいと考えています。
ここでは「代表的な古典」&「教養ワード」を紹介していきます。
哲学&経済学から、ビジネスや仕事に役立つ知識を共有していきます。
今回とりあげるのは、コレです。
経済学では、基本的な考え方です。
ド定番の教科書、マンキュー『入門経済学』でも、「10大原理」のひとつにあがっています。
以下、つぎのテキストを参考に、くわしく説明していきます。
引用のページは、こちらの本によります。
目次
失業とインフレはトレードオフの関係
経済学では、失業とインフレはトレードオフの関係にある、と言われます。
マンキューは、つぎのように表現します。
インフレとは、「モノ&サービスの価格が高い状態」を意味します。
失業は……まぁ、わかりますね。
まえの記事でも書いたとおり、「トレードオフ(trade-off)」とは、「あちらが立てば、こちらが立たず」の状態です。
いっぽうを選べば、もういっぽうは選べない
といった状況をさします。
なので、失業が起きていれば、インフレは起こっていません。
また、失業を解消しようとすれば、インフレが起こりやすくなります。逆に、インフレを抑えようとすれば、失業が起こりやすくなります。
……と、カタどおりに、はなしても、よくわかりませんよね(笑)
以下、具体的な流れをみていきましょう。
失業 / インフレのプロセス

まえの記事で、「マネーの増発が、モノ&サービスの価格をあげる」と説明しました。
この考えをベースにすると、こうなります。
↓
・市場全体の支出が増える=モノ&サービスへ需要が増える
↓
・モノ&サービスの価格がアップ
↓
・雇用者数&人件費アップ
↓
・失業者(率)がダウン
このプロセスをよくみると、「インフレ(=モノ&サービスの価格アップ)」と「失業(=失業者・失業率のダウン)」が、〝天秤のカンケー〟になっているのが分かります。
つまり、インフレと失業が、トレードオフのカンケーになっています。
なので、たとえば、政策をおこなう人が、マネー増発によって失業問題を解決しようとするとき、インフレ(=モノ&サービス価格の上昇)を想定しないといけません。
逆に、インフレを抑えようとして、金利を引きあげたりする場合は、失業者・失業率もアップする危険性を予想していないといけません。
「短期的」がポイント
ちなみに、このルールで大事なトコは、トレードオフのカンケーは「短期的」という点です。
市場では、失業 / インフレのどちらかを選択する期間が、一時的にあるということです。
マンキューは、その期間を「約1〜2年」と見積もっています。
〔……〕今日では、大方の経済学者が、インフレと失業とのあいだに短期的なトレードオフが存在するという考え方を受け入れている。このことは、1〜2年という期間においては、多くの経済政策がインフレと失業とを逆方向に動かすということを意味する。(024)
N.G.マンキュー『入門経済学(第3版)』
たしかに「5〜10年」の長いスパンでみれば、失業&インフレが、同時に起こることをありえます。
じっさいに1980年代のアメリカ経済では、2つが同時に起こり、「スタグフレーション(stagflation)」と呼ばれました。
スタグフレーションとは、「stagnation(停滞)」と「inflation(インフレーション)」を組み合わせた造語です。
けれど、「1〜2年」のあいだだけをみれば、失業 / インフレがトレードオフの状態に場合があります。
そのような事態が〝周期的に〟起こります。
そして、トレードオフに直面したときには、バランスをはかるため、失業 / インフレのどちらかに〝舵を取る〟必要がある ─ このルールは、経済政策の必要性を示しているわけです。
失業とインフレ ─ トレードオフの事例

じっさい、2008年〜2009年の「リーマンショック」ときには、アメリカ政府は、失業とインフレのトレードオフに直面しました。
住宅バブルがはじけ、金融危機におちいると、所得は減り、失業者・失業率も上昇しました。
失業を解決するには、(公共投資などの財政政策のほか)、支出アップ・需要アップのために、金融政策が必要です。
ときのオバマ大統領は、減税などで金融を安定化させ、中央銀行(連邦準備銀行)もマネーの増発をはかりました。
そのいっぽう、マネーの量を増やすことで、インフレ(モノ&サービス価格の上昇)への心配もありました。
このように、アメリカ政府は、経済政策をおこなううえで、失業の改善 / インフレの危険性のトレードオフに直面していたのです。
10年たったいまでは、あのときの政策が正しかったのか、議論がわかれています。
とはいえ、失業対策のために金融政策をとらなければ、失業は野放しにされ、より悲惨な状況になっていた可能性は高いです。
失業 / インフレはトレードオフのカンケーにあるとはいえ、政策をおこなう人は、リスクを想定しつつ、対策に当たらないといけないわけです。
現代の政府は、〔……〕マクロ経済政策を動員して、総支出をコントロールし、景気後退とインフレーションという危険のあいだのかじ取りを試みている。(026)
P.クルーグマン『ミクロ経済学(第2版)』
景気後退はいまでも起きてるし、インフレの時期も続いている。しかし、2008年と2009年に政府がとった果敢な総支出政策が、2008年の金融危機が本格的な恐慌に発展していくのを食い止めたと広く信じられている。(026)
P.クルーグマン『ミクロ経済学(第2版)』
おわりに
「失業とインフレはトレードオフの関係」について、みてきました。
マンキュー、クルーグマンともに、最重要ルールとしてあげています。
わりとすんなり理解できますが、ビジネスマンをはじめ、なにかしら策を実施する人にとっては、不可欠な考えです。
知っておいて、損はありません。
ここにあげた記事を参考に、あらゆるシーンで活用してみてください。
きょうあげた知識が、あなたの役立つとうれしいです。
ではまた〜。

